Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

レベッカ・ブラウン『若かった日々』  ★★★

あまりに違う二人が傷つけ合うのは必然だった―。家族と希薄な関係しか築けなかった父。夫との愛に挫折した母。物心ついたときには離婚していた両親との激しい葛藤や、初めて同性に夢中になった初恋の熱。死に寄り添うホームケア・ワーカーを描いた感動作『体の贈り物』でラムダ賞などを受賞した著者が、少女時代を穏やかなまなざしで振り返る、みずみずしい自伝的短編集。

 自伝小説ってことでいいんだろうか? 最近レズビアン小説づいていたのでレズビアンへの目覚めを描いた話を楽しく読んだ。「ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ」は特によかったです。
 家族、特に父の許しを中心に据えた連作短編とのことで「見栄を張らずにいられなかった父親」を繰り返し繰り返し……これは痛い。先日犬を亡くして遺体と対面した身には「母の体」はつらかったな。もう生きていない体を扱ったことがまざまざと思い出されて一人で泣いた。そして私は母親が病に倒れたら会社辞めるのかもなあと思ったりした。
 そんなに仲良くないし、父親だったら母に任せるけれど、ちょっとした手術のときも結局お見舞い行かなかったけど……あの人はきっと会いに来いとも言わないだろうな。父や弟と違って、明確な意思表示をお互いしないという点では犬との関係に似ているかもしれない。そこにいるだけ。
 読みながらそんなことを考えた本でした。レベッカ・ブラウンの幻想めいた話はさっぱり分からないので(例:『犬』)、「私はそれを言葉にしようとする」が来たときはああ無理だわと飛ばそうとしたが、犬ほど分からないやつじゃなかった。よかった。