Memoria de los Libros Preciosos

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中山可穂『白い薔薇の淵まで』  ★★★★☆

ジャン・ジュネの再来とまで呼ばれる新人女性作家・塁と、平凡なOLの「わたし」はある雨の夜、書店で出会い、恋に落ちた。彼女との甘美で破滅的な性愛に溺れていく「わたし」。幾度も修羅場を繰り返し、別れてはまた求め合う二人だったが…。すべてを賭けた極限の愛の行き着く果ては? 第14回山本周五郎賞受賞の傑作恋愛小説。発表時に話題を呼んだ受賞記念エッセイも特別収録。

 今まで読んだ中で(と言っても三冊目だが)一番好きだな! 長編は敬遠してたんだけどすごくよかった。この人は互いを傷つけ合わずにはいられない恋愛が好きですね。奔放でわがままな年下の女と料理上手な聖母的年上女性のカップルがしばしば中核になるけれど、本書もそれ。年上女性はいつも保守的な価値観の持ち主で、結婚にまつわるエピソードとかは読んでて結構つらいんだけど、作者は60年生まれなんだもんなあ。うちの母親と同世代だ。しょうがないのかなという感じはする。そこから逃れたければもっと若い世代のレズビアン小説を読むべきだろう。
 最初から最後まで楽しみましたが、文庫の巻末に収録されているエッセイ、これもすごかった。『ジゴロ』の主人公カップルみたいな境遇ではないですか。非マジョリティであるセクシャリティをカムアウト(=執筆)し続ける、そんな作家がちらほら思い当たる時代にはなりましたね。