Memoria de los Libros Preciosos

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大森望編『ぼくの、マシン』  ★★★★☆

 00年代の日本短編SFの精華、宇宙・未来編。野尻抱介小川一水上遠野浩平田中啓文菅浩江/上田早夕里/桜庭一樹飛浩隆神林長平円城塔伊藤計劃新間大悟の作品を収録。

 この文庫の文字組み好きだな、本文用紙の色合いも。ただし字間を詰めすぎて三点リーダがもったいないことになっている。こっちは二冊組の科学技術要素よりだとか。『逃げゆく物語の話』の方が幻想っぽいのね。私は津原さんの短編目当てで借りたつもりだったけど、逆でしたね……(笑)ガジェットとしては前者の方が断然好きなんだけどね。ファンタジー苦手意識があるから。まあでもあのメンツなら普通にSFでしょう(勝手)。後半三人のスピンオフは多分読まない、分からないの悔しいから。笑
 上田早夕里「魚舟・獣舟」、かなり話題になってたからいずれ読もうと思ってたら収録されてた。これすごいね。話題になるだけあるね。原稿用紙40枚程度、ってことは15000字くらいでしょ。それでこれだよ。すごいね。これぞ短編って感じだ。読み終わって呆然としちゃったよ。ゼロ年代ベストでもいいんじゃないかってくらいw 私は語り手の男性を女性と思い込んで読み始めたので萌えもしました。女性でいいよね。
 上遠野浩平「鉄仮面をめぐる論議」は昔読んでたな。そもそもの編集コンセプト(初出にこだわらず重要作を集める)を知らなかったので、新作短編かしらんと一人で期待してたよw 懐かしいなあ。あの三部作、細かいところは忘れたけど好きだったな。てか上遠野さん大分好きだったよ。作品前についてた大森さんの解説には笑ったw 「何だかわからんがとにかくかっこいい」www そう思ってた口ですがw あの人の文章の繋げ方とか、私も大分影響受けた(反映はされてない)と思うわ。懐かしい。ブギーポップ以外ならまた読みたい(ブギーポップはリンクについてけない)
 桜庭一樹「A」、『接続されたアイドル』って系譜があるんですかい。「接続された女」は読もうと思って読めてないからな。桜庭さんの話に感じる圧倒的な勢いはなかったかな。私は何より『赤朽葉の伝説』が好きです。
 田中啓文「嘔吐する宇宙飛行士」。これね、大森さんの仰るとおりほんとにタイトルそのままの内容なのよwww 宇宙飛行士が宇宙空間で嘔吐する話w これが表題作になってたら別の意味で話題になったろうなあw 「嘔吐する宇宙飛行士っていう文庫がね」「は??」ってなるよなw いやもう面白かったです。何度か声だして噴きました。実は田中さん、あの落語家シリーズ読もうと思って読んでない(そんな本ばっか)のでこれが初読みだったっぽいんだよね……嘔吐話がね……いやいい出会いでした。ピザの描写には思わずピザ嫌いになりそうでした。すごいまずそう!
 ちなみにこの文庫一番の楽しみは大森さんによる解説と、著者によるあとがきですw 野尻さんの解説、ちゃんとミクのことまで書いてあるからね。SFの文脈でどういう読まれ方をしてるのか、あんま知らないので参考になる。伊藤計画と9.11の関連とか。そういう意味で重要なのかって。でも重要であるのを理解するのと好きになるかどうかは別問題だな。笑