Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

夏目漱石『草枕』  ★★★★☆

草枕 (新潮文庫)
草枕 (新潮文庫)
夏目 漱石
 智に働けば角がたつ、情に棹させば流される―春の山路を登りつめた青年画家は、やがてとある温泉場で才気あふれる女、那美と出会う。俗塵を離れた山奥の桃源郷を舞台に、絢爛豊富な語彙と多彩な文章を駆使して絵画的感覚美の世界を描き、自然主義や西欧文学の現実主義への批判を込めて、その対極に位置する東洋趣味を高唱。『吾輩は猫である』『坊っちゃん』とならぶ初期の代表作。(Amazon

 この人本当にどこまでも文章が上手い……非人情をうたいあげた小説ということで、普段人情ばかり読んで書いている私は正直内容があまり頭に入ってこないのだが、ああ美しい、ああ美しいと思いながらページを繰っていた。死ぬほど美しい、というか好みだ。女性が一人出てきて「余」がハッとしたりどきっとしたりお前の表情には憐れが足りないと言ってるくらいで、ストーリーや人情を排した話なので、別に研究者でもない読者はきれいだきれいだ言ってればいいのかな。笑
 同時代でも鴎外は文語体で、漱石は口語体で書いたために漱石の方がポピュラーになったと耳にしたことがあるけど、この小説については地の文の一人称が「余」というのを措けば、本当に砕けた文章を書いているよね。台詞とかね。「りょうねええええん」って坊さん呼ぶからね。読みやすいよ。
 風景の描写なんかはため息もので、真似したいとは思うけれど、私が書くような文章にぽんと放り込んだらそこだけ浮くわw 豪華な言葉を使ってるわけでもなく、むしろシンプルなのに綺麗だよねー。普段現代小説ばっかり読んでるから余計にそう思うよ。語彙を増やすには漢文読むべし、かあ。