Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

オースター『ティンブクトゥ』  ★★

ティンブクトゥ
ティンブクトゥ
柴田 元幸
 本書は、ポール・オースターが、「犬の視点」を通してアメリカのホームレスを描いた作品。一見奇妙な設定だが、ジョン・バージャーの『King』同様、感情に流されない厳しい犬の目を通してホームレス生活を描くことで、メロドラマ的なセンチメンタリズムに歯止めをかけた。バージャーが数人の登場人物をかわるがわる描いたのに対し、オースターはたった2人の主人公をじっくりと追っていく。まず「これといった血統も特徴もない雑種犬」のミスター・ボーンズ、そしてその飼い主であり、4年前の母親の死をきっかけにホームレス生活を始めた精神分裂症の中年患者ウィリー・G・クリスマスだ。(Amazon

 犬を中心にすえていつもの語り口。イマイチ! 何だろうなあ、『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』にあったような息苦しさがないからかな。オースターに息苦しさを求めているのか私は。話としても、あとがきにあったようにカタルシスがないとかうまく落としてくれないだとか、そこじゃない気がするな。常にこっちが欲しい答えをくれない小説を書いている(私が読む限り)、でも面白さが宿っているのはそこではないな。「書く」というテーマをフューチャーしないとあのパワーは出ないのか?笑 いや、NY三部作以外はまた違いますけれども。
 ストーリーテリングの上手さが出ているという映画ネタの小説、読みたいのに行間がぎゅうぎゅうで読む気しません。どうにかして! いつもゆったりめなのに何であんなつめちゃったの! 前のと違って段落少ない書き方しててもあれじゃ読みにくいぞ! 現時点のベストは『鍵のかかった部屋』。