Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

本多孝好『WILL』  ★★★★☆

WILL
WILL
本多 孝好

累計30万部超のベストセラー『MOMENT』の待望の姉妹編。『MOMENT』の主人公・神田の幼馴染の女性、葬儀屋・森野の視点で描かれる本作は、前作のラストから7年後の物語。18歳のときに両親を事故で亡くし、家業の葬儀屋を継いだ森野。29歳になった現在も、古株の竹井と新人の桑田、2人の従業員とともに、寂れた商店街の片隅で店を経営する。アメリカに住む幼馴染の神田とは、時折電話で話をする。かつて甘美な関係を築いた彼との今後については、彼女自身が結論を先送りにしたままだ。日々淡々と、社長としての務めを果たす森野のもとに、仕事で関わった「死者」を媒介にした、数々の不思議な話が持ち込まれてくる――。森野葬儀店に依頼された、高校の同級生・杏奈の父親の葬儀。その直後に安奈のもとに届いた“死者からのメッセージ”。一度家族のもとで執り行われた老人の葬儀を「自分を喪主にしてやり直して欲しい」と要求する女。十数年前に森野の両親が葬儀を行った男性の妻の元に通いつめる“夫の生まれ変わり”の少年――「死者」たちが語ろうとするものは何なのか? それぞれに潜む「真実」を、森野は探っていく……。(Amazon


 まさか続編が出るとは思ってなかったけど、作者自身も当時は予定してなかったみたいだね。一番好きな本だったんで嬉しかった。神田の僕一人称がかなり理想だったので、森野に移ってどうだろう……と思ってたんだけど、本田さんにとっての森野が好みの女性像であったように、私にとっても好みだったのですんなり馴染めたっちゃ馴染めた。舞台が病院→葬儀屋へ移るってのも綺麗だしね。
 まー……最後まで読んだ感想としては、この計算づくロマンチストおおおお! だ(笑)タイトルと未来と意思と森野。このおおおおお! 最後の神田のあの台詞。このおおおおおおお!
 津原さんは「読者に余韻を与えるラストにしたい」(から全て書ききらない)タイプだけど、本田さんの今作はかなりガッツリ書いてくれましたって感じだね。照れを覗かせつつも、そうですそこまで全部読みたかったんですってのをやってくれた。いや、津原さんは好きな作家なだけで特に関連はない(笑)
 私は本多さんの文章がものすごーく好きで、本当に好きで、彼の書く話なら盲目的に愛せるほどには好きなので、もはや客観的な評価はできないんだけど、話の作り方は結構あざといよな(笑)あざといって言うと言葉が悪いけど綺麗にまとまりすぎている感があるな。その綺麗さに惹かれるんだが、あれが鼻につく人もいるだろな。もっとも最近は人の善悪やら正義やら、伊坂さんが初期と傾向が変わったように、本多さんも伊坂さんほどではないが変わったけれど、伊坂さんがそれを払拭しないのとは違って、本多さんは行き来するんだ、綺麗で爽やかな青春学園モノをまた書いてくれる可能性があるんだ、というのが初期作寄りファンとしては嬉しい。
 登場人物はいつも大して代わり映えしないんだけどね(笑)、それが私の好みストレートど真ん中なので問題はないんだな。地味だけど清潔感があってちょっといい男な「僕」……これって村上春樹以降なのかその前からあったのかちゃんと読書してないからわかんないんだけどどうしようもなく好みだ。ぶっきらぼうな女の子も、おバカだけどかわいい若者も、見たことあるなーって思うけど好きだな。予定調和。あ、今回は竹井さんがめっちゃかっこよかった!笑 私が竹井さんに嫁ぎたいわ! 私が竹井さんの娘になりたいわ! あまり笑わないけど有能でギャンブル好きなところがちょっとジーヴスに似てると思いつつ、竹井さん素敵だったわ……。
 一つ一つの話については、悪意や毒を含みつつ最後は爽やかに浄化、とまあとても綺麗にまとまってました。作意は感じる。
 まあでも私本多さんを愛してるわ、と実感し直せた本でありました。個人的にはまた高校生の恋愛ではない男女モノを書いてくれないかと期待。この人の書く高校生の通う校舎の壁ってすんごい真っ白そうなんだよね! 屋上も真っ白で空は真っ青、そんなイメージだ。『fine days』の影響か。
 次回作も楽しみです。

 

 前作はラブのない二人の間隔が好きだったけど、今作は読み始めから俄然二人の応援団と化していたので、ハッピーウエディングエンドばっちこーい! ですよ。痒いとこまで手が届く! まあわがまま言えばあの二人の結婚生活読みたいけど、そんな有川浩みたいなことをする人じゃないね本多さんは(笑)
 でもさあ、中学生が老女に恋する話なんて、もーね! ロマンチストが、ってね!笑 お葬式やり直すエピローグもね! これでもかってくらいに綺麗だよね! 竹井さんはかっこいいしね!笑 素直な読者なら、いい話だったなあ、って読み終えられると思うよ。少なくとも私は素直に読み終えたよ(笑)
 二人もまとまったしね! もーめでたしめでたしじゃないですか。未来ちゃん。未来ってお前。もはや何も言うことがない。お幸せにだ。ただ、あの目次の安っぽさは何とかならないのかな?笑 斜体なのがいけないのか、とても……いわゆる「スイーツ(笑)」っぽいというか……そうじゃないとは言わないが