Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません』  ★★★★☆

犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
犬は勘定に入れません…あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
コニー・ウィリス,大森 望

 オックスフォード大学史学部の学生ネッド・ヘンリーは、第二次大戦中のロンドン大空襲で焼失したコヴェントリー大聖堂の再建計画の資料集めの毎日を送っていた。だが、計画の責任者レイディ・シュラプネルの命令で、20世紀と21世紀を時間旅行で行ったり来たりさせられたネッドは、疲労困憊、ついには過労で倒れてしまった。シュラプネルから、大聖堂にあったはずの「主教の鳥株」という花瓶をぜひとも探し出せと言われていたのだ。二週間の絶対安静を言い渡されたものの、シュラプネルのいる現代にいては、ゆっくり休めるはずもない。史学部のダンワージー教授は、ネッドをのんびりできるにちがいない、19世紀のヴィクトリア朝へ派遣する。ところが、時間旅行ぼけでぼんやりしていたせいで、まさか自分が時空連続体の存亡を賭けた重要な任務をさずかっているとは夢にも思っていなかった…。ジェローム・K・ジェロームのユーモア小説『ボートの三人男』にオマージュをささげつつ、SFと本格ミステリを絶妙に融合させ、ヒューゴー賞ローカス賞のほか、クルト・ラスヴィッツ賞を受賞したタイムトラベル・ユーモア小説。(Amazon


 ようやく読めた! 多分四年間くらい読む読まないを繰り返してた。『ボートの三人男』とウッドハウスを読んでおいてよかった。ピーター卿シリーズも読んでおいたらもっと楽しめたんだろうな。あとポアロヴィクトリア朝イギリス!
 SFコメディってジャンル付けされてんだけどラストにかけては何故か泣いてた。多分泣き所じゃないんだろうけど物語が畳まれているという事実だけで泣ける(恩田さんは見習ってください!)。コメディと言うには切実すぎる気がする(笑)呑気に笑ってはいられないぞ。すげーよなーウィリスほんとにすげーよ。
 彼女の長編は有名どころ三つしか読んでないけど、短期間を濃縮してお送りしますって感じだよね。作中ではほとんど時間が経たない。密度が濃い。この人百回くらい同じこと言ってるよ、ってのも多い。ウィリスの基本はすれ違い。だもんで霧が晴れたときはとても気持ちがいい! あんだけじらされた果てのキスにはもー拍手喝采ですよ。これを味わうために読んでたよ。あれだけの描写が冗長にならず、必要な溜めであったと感じられるのはやっぱりすごいと毎回思うわけで。ついでにテレンスの愛らしさは異常。フィンチもとってもかわいかった。
 あとがきにもあったけどSF色が濃い目なので、ネットの齟齬シミュレーションあたりはさらっと流したりしてしまった。だって結末が気になりすぎて噛み砕いてる場合じゃないんだもん! 再読の暁にはじっくり読みましょう。
 ウィリスは小うるさいおじさんおばさんを書くことにかけては天才的であると思うよ。殺意すら湧くわ。最近また長編を書き終えたらしいので二年後くらいには翻訳が出るんじゃないかと期待。ロンドン空襲のタイムトラベルものかしら?

 

 ネッドとヴェリティ永遠にお幸せに!!! ああいうプロポーズほんとにいいわあ、ってにこにこしちゃうあたりがラブコメなんだろうね。
 トシーと口論始めたあたりで執事だ! ベインがミスターCだったんだ! と気付いたけどまさか手と手を取って駆け落ちしてしまうとは……いや、駆け落ち以外の可能性はないけど。いやー。ベインすごいなー。ベイン尊敬しちゃうわ。今までの働きも全部あわせて。本当にトシーが好きだったんだなー。
 テレンスやシリルとの別れにちょっぴり泣いたんだけど、しんみりする間は与えられなかった。このどたばた感はすごい。でもモードと結婚できたんだからテレンスは幸せに暮らしているわよね。
 あとはネッドがヴェリティを見つけるシーン! 見つけるはずだと分かっていてもいやったあああああってなるね。んでもって百云年分のキスだぜ! 永遠のパートナーだぜ! おめでとう! おめでとう!
 何と言う断片的な感想。