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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

藤原伊織『ダックスフントのワープ』  ★★★☆

ダックスフントのワープ (文春文庫)
ダックスフントのワープ (文春文庫)
藤原 伊織
大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。(Amazon

 藤原さんこんな話も書くんだ! 『ひまわりの祝祭』のときも思ったけど、「ぼく」一人称だと何となく春樹の匂いがするね。ひまわり~はそうでもないけど(というか私が「ぼく」という人称に反応しすぎなだけだと思うけど)、本書の表題作は登場人物も普通っぽくて春樹な感じだった。
 しかし本当に容赦がないな! 雰囲気や余韻は好きだし、そう冷たい印象は受けないんだけど、話の中で起きている出来事はどれも絶望的ですよね。よくぞここまで……と思うくらいに。思い返してみれば長編も割と……そんな藤原さんを、今後好きな作家の一人に上げようと思うくらいには好きになりましたが。