Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

山本弘『神は沈黙せず』  ★★★★

神は沈黙せず
神は沈黙せず
山本 弘
 この世界は、人類は「神」と呼ばれる知性体のシミュレーションなのではないか? 人工知能学者である兄の行方を追ううちに、妹・優歌がたどり着いた世界の真相とは!? 山本弘が放つ、長編SFエンタテインメント!(Amazon

 人工知能がテーマの『アイの生命』を図書館でパラ見してみたら、本文のフォント変えが気に食わなくて、こっちにした。そういう趣向なのは分かるんだけど、フォントは明朝で統一されていた方が断然読みやすいんだよなあ。文庫だと違うかしら。それと、本書の目次を見て俄然興味が湧いたというのもある。
 本人の公式サイトによると、本書は神をテーマにしたハードSFであるとのこと。「話の都合上現実の科学を歪めている部分」に気付けるほどの知識はないけど、「小説の中で起こる超常現象や、神の存在には、すべて科学的な根拠があります。おそらく、僕と同様、進化論、人工知能宇宙論などがお好きな方には、作中で展開される大ボラを楽しんでいただけるはずです」。神はもちろん進化論も人工知能宇宙論も好きな私はええ、楽しみましたとも。宇宙も生命も起源は解き明かされてないんだし、神の入ってくる余地は多いにあると思う。
 何たって神がテーマなので、どういうオチをつけるのか気になって仕方がなかった。興味のある人なら一気に読めてしまうほどのリーダビリティはある。私は日をまたいでしまったけど、昼間に読み出してたら読み切ってたなあ。量の割には主要登場人物は極めて少なくて、話の通りに進んでいけば困ることもないと、ストーリーは親切設計。筋はつまり神について突き進めていくだけだもんな。ただ科学知識や超常現象の例が山ほど出てくるので、逆に興味ない人には退屈なのかも。ドーキンスミームの話、『The Selfish Gene』では適当に読んじゃってたから、おさらいできて嬉しかった。……これが歪められてたらどうしよ。
 そんな感じで前半400ページはすっごくわくわくしながら読み、オチにもそれなりに納得はしたんだけど、小説としての盛り上がりには欠けている……ような。多分期待値が高すぎちゃったんだろう。テーマがテーマだから、過剰なほどのカタルシスを演出してほしかったんだよなあ(笑)でもすごく面白い小説だったと思います。科学好きならぜひ。