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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

中村航『絶対、最強の恋のうた』  ★★

絶対、最強の恋のうた (小学館文庫)
絶対、最強の恋のうた (小学館文庫)
中村 航
 社会科教師のおでこのテカリ占いをしては大受けしていた陽気でマシンガンな中学時代から、クールで一目置かれる弓道部員の高校時代を経て、大学生になった私がしたことは、恋をすることだった。付き合いはじめて三か月。幸せすぎて自分を見失いがちな私は、ふと怖くなってしまう。そのことを彼に告げると、とりあえず、毎日死ぬほど会う生活をやめ、デートは週末に三回、電話は週三回にするという提案を受けた。トラックを全速で駆け抜けた日々のあとに訪れたのは、恋のスタンプカードを少しずつ押していくような、かけがえのない大切な時間だった。(Amazon

 もう私は恋愛小説を楽しめないのかな……と思ってしまった。アンソロジー『I LOVE YOU』の「突き抜けろ」を二章に持ってきて、長編にした小説。前半二章が男視点、後半二章は女視点。最後はあの人の番外編。
「突き抜けろ」はやっぱいいんだよね。だって木戸さんが反則だもんw 変人小説といえば伊坂幸太郎の陣内だけど、木戸さんもいいよ。最後の、二人が酔っ払って笑いまくるところなんて素晴らしいでしょ。空気が伝わってくるよ。わかるもん、意味もないことでげらげら笑えるあのテンション。
 木戸さんが「おい、おい」と声を押し殺しながら、手招きする。
「ヒレ酒、ヒレ酒だってよ」
 そこにはカップ型のヒレ酒が積んであった。表面にフグの絵が描かれたラベルが貼ってある。
「よ、四百円。四百円だってよ」
 僕らはこらえきれずに爆笑した。店員は僕らを警戒しつつも、無関心な感じだった。
 一・五リットル入りの紙パックの日本酒を選び、レジに持っていった。
「お、おい」
 後ろから、木戸さんがへろへろの笑い声で行った。
「熱燗にしてもらえ」
「馬鹿じゃねえの」
 僕は噴きだした。

 わかるよー!笑
 じゃあ何が駄目だったのかというと、カップル二人が浮世のものと思えないふわふわした恋愛をしていたのと、後半から視点が女性に移ってしまったことだと思う。あの二人には正直現実感がなさすぎる。恋愛はファンタジーかもしれないけど。そして私は男性が何人かでたわむれていると幸せになれるという浮かれた脳みその持ち主なので……ごめんなさい。女性がたわむれるんだったら、もっときついことをズバズバ言ってくれないと満足できない。あとは単純に恋愛小説というカテゴリのせい。
 悪くはない、悪くはなかったんだけどなー! ただ、何もなかった。「突き抜けろ」を短編で読めば十分だったんだろう。