Memoria de los Libros Preciosos

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アヴラム・デイヴィッドスン『どんがらがん』  ★★★★

どんがらがん (奇想コレクション)
どんがらがん (奇想コレクション)
殊能 将之
 空前絶後の輝かしい受賞歴をもち、キプリングやサキ、G・K・チェスタトンに比肩すると評されるアヴラム・デイヴィッドスン。この才気と博覧強記の異色作家が遺した短篇を、日本の誇る才気と博覧強記の作家殊能将之が編んだ傑作選。超兵器“どんがらがん”をめぐるピカレスクスラップスティックな表題作、完璧な短篇小説「ゴーレム」、ヒューゴー賞受賞「さもなくば海は牡蛎でいっぱいに」、MWA賞受賞「ラホール駐屯地での出来事」、世界幻想文学大賞受賞「ナポリ」、新本格ミステリ的な逸品「すべての根っこに宿る力」ほか、全16篇を収録。

 面白かった! 奇想だった! 殊能さんが編んだから、発売当初から読みたいとは思ってたんだよね。三年前からね。殊能さんの解説も楽しんで読んだ。奇想コレクションは愛のこもった解説も素晴らしい。著者の略歴などを読むのが大好きだし、私のように頭の鈍い奴には、一話ごとの解説が欠かせないんです。16話も入っているので、好きな順にいくつか。
 まずは「ナポリ」、これに尽きる。元々地の文で進む話が好きなもんで、こういうたっぷりした語りの調子は大好物。雰囲気いいよね。ナポリ。って言いたくなる(笑)よくわからないけどいいわー。語り口としては「グーバーども」も好きだった。ネタも好きだ。おそろしく汚く饒舌な語りが英語ではどんなんなのか読んでみたいね。この二つは特に文章と雰囲気が好きだった。
 ネタとしては「さもなくば海は牡蠣でいっぱいに」。だって奇想すぎるもん!笑 誰も考えないよー。えもいわれぬぞくぞく感。「さあ、みんなで眠ろう」は“ほろ苦くセンチメンタルな結末”なんてもんじゃないですよ。深い絶望とやりきれなさですよ。人間はきっとこうするんだろうなって思っちゃうよ。どこまでも嫌な生き物ね。「パシャルーニー大尉」はいい話であった。健気な子供ってやつはいるだけでストーリーを魅力的にする。傑作の名に恥じない面白さだった「ナイルの水源」も、マジで奇想ですね。
「尾をつながれた王族」「サシェヴラル」あたり、これが本物の雰囲気小説ってやつか! と思った(笑)いやー真実が知りたいですけど。
 表題作「どんがらがん」は“Bumberboom”だそう。バンバーブン! バンバーブン!