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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

コニー・ウィリス『最後のウィネベーゴ』  ★★★★☆

最後のウィネベーゴ (奇想コレクション)
最後のウィネベーゴ (奇想コレクション)
大森望
 愛するものを失う痛みと、滅びゆくものへの哀惜、そして赦し。犬が絶滅してしまった近未来のアメリカで孤独な男が出逢う、ささやかな奇蹟……。読後に深い余韻を残す表題作から抱腹絶倒コメディまで、アメリカSF界の女王ウィリスのベスト・オブ・ザ・ベスト4本を厳選する傑作集。ヒューゴー賞ネビュラ賞・SFクロニクル誌読者賞・ローカス賞他、収録作4篇あわせて全12冠。

 表題作が巧すぎてもう巧いとしか言えない。犬の話なんだけど、読んでる途中にちょうど庭の犬を見ながら弟と「犬には表情筋がないんだって」「でも今の顔は絶望しているように見えない?」なんて話をしてしまったので、あのラストにはボロ泣きだ。よかったよ。巧いよ。写真には写し取れない犬の表情を大事にするよ。
 ウィリスは短編の女王と呼ばれるくらい評価も高いそうですね。日本では『航路』『ドゥームズデイブック』『犬は勘定に入れません』の三作が有名だから長編作家のイメージがあったよ。
 他三篇は打って変わって(というか表題作だけがシリアスなんだけど)コメディ。中でもテンポよく読めたのが「女王様でも」。生理をうざったいと感じる一女性として快く爆笑した。いいなあ、閉経前に実用化されないかなあ。「タイムアウト」と「スパイス・ポグロム」はラブコメ。後者は日本が絡んでくることもあってニヤニヤ。ハナ=桜って古文ね!
 コメディは三つとも台詞や展開が立て込んでいて、ややこしいなあ、長編なみにまったりやってほしいなあ、やっぱウィリスは短編<長編じゃなかろうかと思っていたんだけど、「最後のウィネベーゴ」が最高だったので考えを改めた。★は全てその話へ。これはぜひ犬好きに読んでもらいたい。