Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

津原泰水『ピカルディの薔薇』  ★★★★☆

ピカルディの薔薇
ピカルディの薔薇
津原 泰水
 大変おいしゅうございました。手に取ったときは薄いし字が小さくて、もっと読みたいよ~とがっかりしたんだけど、中身が濃いから満足。
 頑迷な男を襲う白昼夢。(「夕化粧」)人形作家の恐るべき新作。(「ピカルディの薔薇」)鳥を彩る伝説の真相。(「籠中花」)饒舌に語られる凄絶な食。(「フルーツ白玉」)稲生武太夫伝説への硬質なるオマージュ。(「夢三十夜」)未来を覗ける切符の対価。(「甘い風」)猿渡の祖父が見た彼の幻の都。(「新京異聞」)江戸川乱歩中井英夫の直系が紡ぐ、倦怠と残酷の悲喜劇。(Amazon
 たまに時系列が錯綜するせいか、読んでいて自分がどこにいるのかわからなくなることがあります。今はどこ? と。私の理解力が足りないせいなのか、そういう仕掛けなのか。
 一つだけ言うとしたら、もっと伯爵を出してください……!