道尾秀介『片目の猿』 ★★☆
昔、九百九十九匹の猿の国があった。
その国の猿たちは、すべて片眼だった。顔に、左眼しかなかったのだ。ところがある日その国に、たった一匹だけ、両眼の猿が生まれた。その猿は国中の仲間にあざけられ、笑われた。思い悩んだ末、とうとうその猿は自分の右眼をつぶし、ほかの猿たちと同化した――。
そんな話だった。
「なあ、猿が潰した右眼は、何だったと思う?」
俺が尋ねると、冬絵は戸惑ったように首をかしげた。
「俺はこう思うんだ。猿がつぶしたのは、そいつの自尊心だったんじゃないかって」
俺は私立探偵。ちょっとした特技のため、この業界では有名人だ。その秘密は追々分かってくるだろうが、「音」に関することだ、とだけ言っておこう。今はある産業スパイについての仕事をしている。地味だが報酬が破格なのだ。楽勝な仕事だったはずが――。気付けば俺は、とんでもない現場を「目撃」してしまっていた。(カバー折り返し)
帆坂くんには腕がないのかと思ってたな。「もやし」なんて形容するからさ。腕がなかったら焼き豚作るのは無理かもしれないけど。野原の爺さんに鼻がないのはカードでわかった。トウミとマイミは雰囲気がシャム双生児でしたよね。