時雨沢恵一『リリアとトレイズ(6)』 ★★
リリアとトレイズ 6 (6)
時雨沢 恵一
「わたくしの命を守るために――、外にいるという者達を皆殺しにするというのですか?」
「御意」
トラヴァス少佐が、うつむいたまま短く鋭く返した。
「それは、あなたやあなたの部下の命も守ることになるのですか?」
「御意」
「ならば――、存分にやりなさい」
シリーズのクライマックスのはずなのに、あんま盛り上がれなかったなあ。リリトレの二人に思い入れが少なかったのが原因か。ストーリー自体も、このエピソード前編からテンポが悪いというか、乗り切れないところがあった。説明にうんざりしちゃったのかも。残念。好きだけどね、台詞回しとか。変態さんとか(笑)
春休み明けに控えている学院恒例ダンスパーティの相手が決まらないまま、母親のアリソンと列車での旅行に出かけたリリア。一方そのころとレイズは、婿入り話の相手の、観光案内役を引き受けるはめになっていた。しかもその相手の女性の護衛は、なんとトラヴァス少佐だった。(カバー折り返し)
アン王女はなかなか素敵な女性でしたよ。
「ちょっととレイズ、まさか、“隠すつもりはなかったんだ”とか言うんじゃないでしょうね!」
トレイズは、今度は即答する。大声でしっかりと。
「いいや! ずっと隠すつもりだった!」
リリアは、むう、っと唸ったあと、
「ならよし!」
「いいのか?」「いいのか?」
「いろいろ聞きたいことがある!」
リリアは、目の前にいる人間を頭から喰い殺さんばかりの勢いで、そう言った。
「い、いろいろと言いたいことがある……」
首元を締めつけられながら、トレイズが弱々しく言った。