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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ジョン・クラカワー『信仰が人を殺すとき』  ★★★★☆

信仰が人を殺すとき - 過激な宗教は何を生み出してきたのか
信仰が人を殺すとき - 過激な宗教は何を生み出してきたのか
ジョン・クラカワー, 佐宗 鈴夫

「だが、人生には、幸せよりも大事なことがあります。たとえば、自分で自由にものを考えることです」


 信仰全般についてではなく、モルモン教について。最近起きた事件を導入として、モルモン教のおこりから今に至る歴史を見ていく。二段組で文字がぎっしり詰まっている上に、中身もみっしりなので、結構時間をかけて読みました。内容も内容だしね。
 アメリカでは、モルモン教徒は長老派教会の信者より多い。世界では、ユダヤ教徒より多い――「神の命令」に従い弟の妻とその幼い娘を殺した熱心な信徒、ラファティ兄弟。なぜ、熱心な宗教者たちが殺人者となり得たのか? 理性と信仰、原理主義と人間の倫理の問題など宗教の深い闇に迫った渾身のノンフィクション。(Amazon
 モルモン教という宗教については耳にしたことがある程度で、何も知らなかった。もともと無宗教であり宗教に対する軽い嫌悪感を持っている私には、モルモン教徒(特に原理主義者)の激しさは全く理解できないし、それなら原理主義者が堕落してると言うような、会社っぽい本流のモルモン教の方がはるかにマシに見える。マシって言い方は棘があるかなあ。でも、白人至上主義・男尊女卑・一夫多妻などマイナス面を見ていると、有色人種で女性の私には受け入れられない。
 生まれた頃からそういう価値観のもとに育てられたら、染まってしまうのは当たり前なんだけど……私は宗教色も薄く「科学的」な教育をほどこされてきたので、本当にわからないんだよね。お互い、自分の核になっている価値観を打ち破って相反するものを受け入れるのは、とても大変なことだろう。私はその努力をしていないししようとも思っていないけど。
 この本はモルモン教への反感を抱かせるための本じゃない、もちろん。初めて得る知識に私が嫌になってしまっただけ。その名の通り、どうして信仰が人を殺させてしまうのか? ってことを考察しております。信仰は自分を特別視・絶対視するためのものだと思う。