津原泰水『ブラバン』 ★★★
ブラバン
津原 泰水
人はなぜ音楽を奏でるのか。僕はいま自分なりの答に至ろうとしている。
音楽なんて、単純な物理法則を利用した儀式に過ぎない。
(中略)
音楽は何も与えてくれない。与えられていると錯覚する僕らがいるだけだ。
そのくせ音楽は僕らから色々に奪う。人生を残らず奪われる者たちさえいる。
なのに、苦労を厭わず人は音楽を奏でようとする。
種を植え歩くようにどこにでも音楽を運んでは奏で、楽しいことばかりならいいけれど、それを原因に争ったり病気になったり命を絶ったりする。 そんな手に負えない悪辣な獣から僕らが逃れられないのは、きっと、そいつと共にいるかぎりは何度でも生まれ直せるような気がするからだ。そいつに餌を与えながら、滑らかな毛並みを撫でてきた者ほど、予感に逆らえず、背を向けられない。
最初は随分入りにくかった(登場人物が多くて見分けられない)なあ。徐々にわかるようになってきたものの、最後まであやふやな人もいましたが(笑)津原さん本人が体験してきたのかと思うくらい何だかリアルだった。高校生の青春小説かと思いきや、回顧しているかたちになってます。現実は結構辛い。重松清『トワイライト』ほどではないけれど。
「駄目いうことはないですよ。基本的には本人の希望次第じゃけど」先生は腕組をし、「乱れるようなら本番では外れてもらいますよ」
「そうならんように私が教えます。唐木くん、どう?」
みなの視線が彼に集まった。唐木は泣いていた。「ユーフォニウムを吹かしてください」
笠井さん素敵過ぎた。