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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

桜庭一樹『少女七竈と七人の可愛そうな大人』  ★★

少女七竈と七人の可愛そうな大人
少女七竈と七人の可愛そうな大人
桜庭 一樹

「君がそんなに美しく生まれてしまったのは」
「ええ、ええ」
「母親がいんらんだったからだ」
「ええ……」
 超自然的な理由にさせて。
 これはけして。
 遺伝では。
 ないよ。


 ベルカ? うぉん言うたびにベルカベルカと思ってしまったのと、美少女・美少年ペアにあまり萌えないのとで、普通でした。『Sweet Blue Age』に収録されていた「辻斬りのように」の続編みたいな。
 わたし、川村七竃十七歳はたいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった。――男たちなど滅びてしまえ。吹け、滅びの風。半身を奪われるような別れ、あきらめていた人への想い、痛みをやさしさが包み込む。「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の気鋭、桜庭一樹が描き出す、最高の恋愛小説。(Amazon
 え、恋愛小説だったの? 母娘の話だと思ってたよ。
 七回竈に入れないと炭にならない、七竈の木。しかしその炭はとても上質なものであるという――奇麗な名前の由来ですね。「ななかまど」って名前は、実際どうかと思うけどそんなリアリティは追求しないぜ。

 

「女の人生ってのはね、母をゆるす、ゆるさないの長い旅なのさ。ある瞬間はゆるせる気がする。ある瞬間は、まだまだゆるせない気がする。大人の女たちは、だいたい、そうさ」
「あぁ、なんてこと」
「はは、気にするな。旅は長い。これから君、いろんなものを得て、失い、大人になって、そうしていつか娘を産んだら、こんどは自分が、女としてのすべてを裁かれる番だ。はは、だから、気にするな」

「髪を切って、そしたらそんなにぼくに似てしまうなんて。もう、いっしょにいられるわけがない」
「母をゆるさないことだけが、わたしの純情です。雪風
「そんなら、ぼくは父をゆるさないことにする」