Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

三島由紀夫『仮面の告白』  ★★★★★

仮面の告白
仮面の告白
三島 由紀夫

 その絵を見た刹那、私の全存在は、或る異教的な歓喜に押しゆるがされた。私の血液は奔騰し、私の器官は憤怒の色をたたえた。この巨大な・張り裂けるばかりになった私の一部は、今までになく私の行使を待って、私の無知をなじり、憤ろしく息づいていた。私の手はしらずしらず、誰にも教えられぬ動きをはじめた。私の内部から暗い輝かしいものの足早に攻め昇って来る気配が感じられた。と思う間に、それはめくるめく酩酊を伴って迸った。……


 世界のミシマはすごかった……!! 文章が、描写が美しくて、とても官能的でした。エロース! 引用の部分だって「自慰をして射精した」とでも書けば全てが終わるのに、この言葉の尽くしよう……! 私は感動いたしました。いやその部分だけじゃなくてね?笑
 「私は無益で精巧な一個の逆説だ。この小説はその生理学的証明である」女性に対して不能であることを発見した青年が、幼年時代からの自分の姿を丹念に追求するという設定のもとに、近代の宿命の象徴としての“否定に呪われたナルシシズム”を開示してみせた本書は、三島由紀夫の文学的出発をなすばかりでなく、その後の生涯と文学の全てを予見し包含した戦後文学の代表的名作である。(裏表紙)
 まず文章がすごい。大学で先生が「こんな豪華絢爛な文章、今の日本人には書けません」って言ってたけど、本当にそう。私は一度読もうとして挫折したことがあるほどだ(笑)こんな堅苦しいもの読んでられないわ、と。再挑戦してみてよかった。これはきちんと味わうべきだ。
 内容もすごい。三島といえば妻子持ちだが同性愛者で、市ヶ谷で自殺したことが有名。「私」は肉体的にコンプレックスを抱えていて、女性に対しては全くの不能であり、血や死に対する執着を持っている。終盤は死にたい死にたいって言ってるんだけど、そうだね死にたいよね、と頷いてしまう感じでした。だって切々と訴えてるんだもの……!
 とにかくすごい、と。これを日本語で読めるなんて、日本人やっててよかったー!
 ……今ウィキペディアで三島の頁を見てきたら、とても面白かったので一度は皆さん読むべきです。太宰のこと嫌いだったのかな……昔の文豪って激しいよね。

 

 私は演出に忠誠を誓った。愛も欲望もあったものではなかった。
 園子は私の腕の中にいた。息を弾ませ、火のように顔を赤らめて、睫をふかぶかと閉ざしていた。その唇は稚なげで美しかったが、依然私の欲望には愬えなかった。しかし私は刻々に期待をかけていた。接吻の中に私の正常さが、私の偽りない愛が出現するかもしれない。機械は驀進していた。誰もそれを止めることはできない。
 私は彼女の唇を唇で覆った。一秒経った。何の快感もない。二秒経った。同じである。三秒経った。――私には凡てがわかった。


 絶望した! 女に欲情できない自分に絶望した!(by絶望先生)(すみません古典の名作を)でもすっごく伝わってきたんだもの。とても印象に残ったシーンです。