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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

米澤穂信『さよなら妖精』  ★★☆

さよなら妖精
さよなら妖精
米澤 穂信

 いま思い出した、あのひとは美しかった。だがなぜそれwいままで忘れていたかといえば、あのひとはその姿よりも価値のあるものを見せてくれたからだ。


 一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。覗き込んでくる目、カールがかった黒髪、白い首筋、『哲学的意味がありますか?』、そして紫陽花。謎を解く鍵は記憶のなかに――。忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。(Amazon
 一つだけ言うとすれば上下デニムって伊角さん並みですね(笑)まあ1991年の話だから……。 

 

 あのときのおれは、マーヤが引き連れてきた世界の魅力に幻惑されていた。やっと現れた「劇的(ドラマティック)」にすがりたかっただけだった。それを自分のためと名言することによって、おためごかしだけはせずに済んでいたが、救いといえばそれぐらいだ。

 もちろん、そうだ。おれがしくじったから、この結果を迎えたわけではない。おれは思い違いした高校生だっただけで、そのせいでマーヤが死んだわけではない。そこまで慢心はしていない。おれがなにを望んでも、どう動いても、きっと結果は同じだった。しかしなんということだろう、自責さえ許されないとは。