Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

桐野夏生『リアルワールド』  ★★

リアルワールド
リアルワールド
桐野 夏生

 何でもくれるんなら、俺にあんたの命くれ。俺は別にあんたらの息子として生まれたくなんかなかったんだから、俺にあんたらの命くれ。俺が心底軽蔑してるのわかってるのか。あんなババアが一生くっついて来ると思ったら、俺の人生はおしまいだって真っ暗になる。

 本物の「取り返しの付かないこと」というのは、永久に終わらなくてずっと心の中に滞って、そのうち心が食べ尽くされてしまう恐ろしいことだ。「取り返しの付かないこと」を抱えた人間は、いつか破滅する。


 永久脱毛のモニターをしながら寝転がって読みました(笑)電気の痛みを感じながらも読み終えることができた、ってのはそれだけリーダビリティがあるんだろうけど、読み終えても何も残らなかった。
 山中十四子、通称トシ。クールなテラウチと、エキセントリックなユウザン、育ちのよいキラリンという3人の友人とともに、残り少なくなった高校生活を送っている。夏休みのある日、隣家の同い年の少年が母親を撲殺した。彼がトシの携帯電話と自転車を盗んで逃亡したことから、4人の女子高生は事件に巻き込まれてしまう。警察や大人たちに真実を話せず、個々に抱える悩みを逃亡少年に照らす彼女たち。「ヒトから見られる自分」と「本当の自分」のはざまで揺れ動く思春期の心が、章ごとに語り部を変えるスタイルでつづられている。(Amazon
 ミミズは母親を衝動的に殺してしまう(前から真っ暗だったとしても)。死に至る直前の母親の台詞も滑稽だけど、逃げながらも、誰かが指摘したように現実が見えてないミミズも滑稽だ。殺人事件の犯人の逃亡を幇助してしまうほど、この四人(三人か)は様々なものを抱えていたのかもしれない。けど! いやーどうなの? トシなんてかなり恵まれてる方だと思うけどな。
 「他人から見られる自分」と「本当の自分」のはざまで揺れ動くのは、何も思春期だけじゃないんじゃないかしら。まあ思春期が一番敏感なのかもしれないけど。美しく描けるし。思春期の少年少女ってすっごくそそるモチーフですものね(笑)テラウチもいっそ哲学者になってしまえばよかったのに。
 私が女子高生だったのは二年前で、桐野さんが女子高生だったのはもっと前で、今の女子高生がどんな世界をリアルだと考えているのかはわからない。私は私立の女子高に通っていたから、トシたちと同じ状況にあったんだろうけど……のんびり平和な毎日しか存在しなかったんだよね。若竹七海スクランブル』や三浦しをん『秘密の花園』あたりには共感する部分があるけど。女子高生ってこんなにシビアだったっけなあ。
 私にはリアルじゃなかったわ。

 

 ミミズと一緒にキラリンは死んじゃうし、テラウチも自殺してしまう。よく死ぬなあ。自分宛の遺書がなかったユウザンの気持ちはよくわかるよ(笑)きっとトシとは離れてしまうだろう。