保坂和志『プレーンソング』 ★★☆
プレーンソング
保坂 和志
「ゴンタのそういう考えっていうか、態度がスゴイんだよ。映画やってるやつらなんか、そんなところから出発しようとしないだろ。
面白い話を撮ることしか考えてないじゃん。
ゴンタはねえ。
面白いって、どういうこと? とか、この世にカメラが存在してるって、どういうこと? とかね、そういうことを考えられるんだよ。
だから、仮りにね、今撮ってるのがつまらなくてもいいの。いつかきっと、全然違う映画を撮れる。
――っていう可能性があるんだよ」
小説にもやっぱ当てはまるんでしょうかね。
うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる……。猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。(裏表紙)
別に何が起こるわけでもない。いや、主人公のもとに何人か知り合いや知らない人が転がり込んできたり、皆で海に行ったりするのだから、確かに物語は動いているのだけれど。主人公の視点からまわりの人や猫や風景を綴って、のんべんだらりと続いて、あっさりと終わる。
確かに自分の日常とは違う、でもどこかで営まれていてもおかしくない、『いる』んじゃないかって。私が、誰かが、五人くらいで海に行ったらこんなこと話すのかもしれないなあって。ゆるゆるとした長めの文章は、読み手を不快にさせることがない。子猫はいつのまにか育つし季節は移り変わっていくんだなあと思う。ルーティンワークをこなしちょっとしたハプニングもあり人と話をするんだなあ。
台詞の改行が多いのが何とも気になりました。私はあまり入れてほしくない派。
解説でノスタルジアの話をしていたけれど、確かに懐かしい~! って思う感じじゃないんだよね。まあ自分が現時点でよう子の年齢だってこともあるけど。私は意味もなく海に行ったことがないので、適当な仲間と車で海に行きたいと思った。内陸在住だからかなり遠いんだけど。んでもって、こんな風な絶妙な間柄の人っていない。