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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』  ★★★★

陽気なギャングの日常と襲撃
陽気なギャングの日常と襲撃
伊坂 幸太郎

「私も一緒に行こうじゃないか」響野が腕を組み、多忙な上司が、部下のために無理をして助太刀することを決断したかのような、言い方をした。
「急に不安になってきたな」成瀬は言う。
「わたしも」と雪子がうなずく。「わたしも心配になった」
「僕、やっぱりやめておこうかな」
「おいおい、私一人じゃ不安じゃないか」と響野が真剣に訴えた。


 伊坂作品初の続編! わーい! ギャングは映画も見たいと思いつつ行けてません。雪子のキャストには賛成ですが、響野はイメージと違う……。佐藤浩一さん嫌いじゃないんですけど、渥美@イージスも私はちょっと、でした。
 人間嘘発見器成瀬が遭遇した刃物男騒動、演説の達人響野は「幻の女」を探し、正確無比な“体内時計”の持ち主雪子は謎の招待券の真意を追う。そして天才スリの久遠は殴打される中年男に―史上最強の天才強盗4人組が巻き込まれたバラバラな事件。だが、華麗なる銀行襲撃の裏に突如浮上した「社長令嬢誘拐事件」と奇妙な連鎖を始め……。絶品のプロット、会話、伏線が織りなす軽快サスペンス!(裏表紙)
 伊坂さんは何も考えずにはじめから書く、とインタビューで仰っていた気が。こんなに入り組んでるのになあ……。全てがラストへ繋がっていく、絡まった糸をほどいたら一本だった! みたいな構成はお見事。この前に読んだ『夏期限定~』より上手だ。『ラッシュライフ』に似てるかも。
 前作で活躍した四人組がまた大活躍。挿絵もいい感じでよかったですねー。久遠くんが笛吹いてるやつが特に好き!(あれ久遠だよね?)一章は短編として発表したものを長編仕様に書き直したらしいけど、よくぞここまで繋がったお話を書けますね。無駄なものは何ひとつないのかね。もっと無駄をちりばめてもいい気もしますが。
 この四人は自分達が強盗であることをたまに口にするんだけど、周りの人は冗談でしょ~何言ってんのよ、と全く相手にしません(笑)敢えて隠さない方が怪しまれないもんね。身近な人が私銀行強盗なの、って言い出したら現実味なさすぎて笑い飛ばしちゃうけど。この小説みたいに、何度もうまくいくはずもないと思うし。この人たちいつまで強盗続けるんでしょ? もうお金は余るほどありそう。
 悪役が憎めないところも、魅力ですね。鬼が怒るみたいな人とか、特に。
 久遠くんの動物愛護主義にはまったく同感。名台詞だよ~。
 ユーモアに溢れた気軽に読める小説なので、是非一冊目からどうぞ。

 

「鶏には同情しないのに、銀行の肩は持つんだ?」

「これが逃げた犬だとか、行方の分からなくなった熊だとかなら、俄然張り切るけど、しょせんは人間だからな」

「別に。どっちにしろ助けたよ。ただ、あそこで、『犬派か猫派なんてどっちでもいいじゃない』なんて言うようだったら、置いて帰ったかもしれない」


 人間は神が特別につくったなんていう説があるからこんなにも動物がないがしろにされているのでは、と思ってやまないのです。宗教に口出しすると怖いからやめるけど。