Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

北方謙三『されど君は微笑む』  ★★★☆

されど君は微笑む
されど君は微笑む
北方 謙三

「友だちだと思う男を、何人も何人も死なせた。惚れた女も、死なせた。そんな俺が、自分が生き残るために、カーテンなんか引けると思うのか?」


 しゃ、しゃ、社長!
 読み始めてすぐにこれじゃあ、動悸息切れを起こすってもんですぜ。約束の街シリーズ六冊目、ブラディ・ドールの世界とようやく交錯します。読んできたかいがあった……! ソルティをして「理由もなにもなく、不意に、私はこの男がたまらなく好き」にさせてしまう男・川中良一。何そのカリスマ性!
 幾つもの死を見過ぎた眼、いつまでも心を衝く哀しい笑顔。川中良一の最初の印象だ。 川中は街にトラブルを運んでやってきた。N市で”ブラディ・ドール”という酒場を経営する川中は、ホテル・キーラーゴの社長の娘・秋山安見を探しに来たのだった。安見はプロの殺し屋に狙われていた…。 他人の人生の暗いところに首を突っこみ、塩辛い思いをしてばかりいる”ソルティ”と、川中は抗争の渦中に飛び込む!!虚飾の街に”ブラディ・ドール”の男たちが集う。(Amazon
 社長! のひと言につきますね。触れれば火傷しそうな(笑)坂井も相当楽しみだったんだけど、やっぱり社長の存在は大きかった。ちらほらとブラディ・ドールの登場人物名や小道具が出てくるのは堪りませんな……!
 ソルティと波崎の絆が予想以上に強かったのにも驚きです。相棒だったのかお前ら。坂井と下村を彷彿とさせるよ……(そうか?)年が気になります。35くらいか。今の坂井はソルティと同じくらいなのよね。あの二人はギリギリ20代で出会ったからな。坂井の初登場なんて24ですし。若かったのね。
 S市の人間関係に明るくなってきたので、ストーリーも把握しやすかった。安見を取り戻せ!+久納家遺産相続問題、ですね。ソルティはいっちょまえに男になったね。
 強さは坂井・山南・水村>ソルティ・波崎ってか。社長は論外。

 

「俺はいままで、仕事の半分は自分で決めてきました」
「残りの半分は?」
「それは、社長が決められました」
「まったく、藤木にそっくりになりやがった。俺は付き合いきれん。ボロ布みたいにくたばる男を、俺はもうこれ以上見たくないんだ」


 藤木のジッポ……! 叶さんの金魚は元気ですか。下村敬のことをまだ覚えていますか。と問いただしたくなってしまうねえ。

「生きていれば、なにもなくさないというわけじゃない。生きているためになくすものも、いっぱいあるの、雄一くん」
「なに言ってやがんだよ。死ねば終わりじゃねえかよ」
「死ねば、すべてなくなるものしか、持っていない人にとってはね」


 男が男でいられる限りは最強の女房になれる安見だけど、そんじょそこらの男は破滅させてしまうほどの魔性の女。周りの男がすごかったばっかりに……。結婚できるのかしら。雄一は人間味が溢れてていいと思うよ(笑)