川上弘美『蛇を踏む』 ★★
蛇を踏む
川上 弘美
「うそばなし」を書いているときには、顔つきもうそっぽくなり、そんなときに誰かが話しかけてきたりしたら、うそばっかりぺらぺら言うような気がします。
「うそ」の国に入り込んでしまっているのでしょう。
「うそ」の国は、「ほんと」の国のすぐそばにあって、ところどころには「ほんと」の国と重なっているぶぶんもあります。「うそ」の国は入り口が狭くて、でも、奥行きはあんがい広いのです。
芥川賞ってよくわからない。文学ってよくわからない。自分にわからないものを諦めて、楽な方へ流れるのは怠惰なのかもしれないけど。エンターテイメントやミステリの方が、面白いんだよなあ。川上弘美は好きな作家だけど、本書はそうでもないかな。
蛇を踏む:ヒワ子は働いているカナカナ堂へ向かう途中で、蛇を踏んでしまった。その日帰宅すると見知らぬ女が部屋にいる。蛇だな、と思ったが女はヒワ子の母だと言う。
消える:家では最近よく消える。曾祖母、ゴシキ、今は上の兄だ。
惜夜記:あらすじを書くことは私の手におえません……。
大学でレポートを書く際に読んだ本に、川上弘美はいとも簡単に境界を溶かしてしまう、とあった。この本を読んでその通りだと合点がいった。現実と非現実の境目なんて、ないのよ。梨木香歩『沼地のある森をぬけて』と少し似ているかもしれない。