Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

あさのあつこ『弥勒の月』  ★★☆

弥勒の月
弥勒の月
あさのあつこ
 痛みにも、苦痛に耐えることにも、脆くなった。自らの肉を斬らせて相手の骨を断つことにも、心を僅かも乱さず止めを刺すことにも、瞬時の隙をついて急所を抉ることにも、脆くなった。もう、できまい。人というものと結びついた時、人はここまで脆くなる。
 何をどうしたものだか、『透明な旅路と』の続編だと勘違いしていた。続編が出るって話を聞いていたからだけど、それにしてもアホすぎる。開けてびっくり時代小説でした。あさのさん初だね。ヤングアダルトのみに留まらず、手を広げているのはいい傾向だと思います。しかし、私はやっぱり少年が好き。本書は12~18の少年が好きだと公言するあさのあつことしては珍しく、少年が出てこない。まさか、そんなことが有り得るのか……? と思ってたら有り得ました。彼女の児童書は未読だから、下手なことは言えないが。
 小間物問屋「遠野屋」の若おかみ・おりんの溺死体が見つかった。安寧の世に満たされず、心に虚空を抱える若き同心・信次郎は、妻の亡骸を前にした遠野屋主人・清之介の立ち振る舞いに違和感を覚える。――この男はただの商人ではない。闇の道を惑いながら歩く男たちの葛藤が炙り出す真実とは。(Amazon
 岡っ引きの伊佐治と同心の信次郎が殺人事件の真相を探り出そうとするが、手ごわい中ボス遠野屋、そしてラスボスのあの人はおかしなことに、ってな話です。ごめんなさい嘘です。もっと深いはずです。
 私は時代小説があまり得意ではないのに加え、最近では困ったことにややこしい言葉を無意識にすっとばして読む悪癖がついてしまったので、あまり理解できていない。「心の闇」とかいうものを題材にしているんだろう。いやこんな軽くいっちゃいけねえよ……すみません。
 艶っぽく狂気を孕んだ信次郎が好きです、ええ。大人の色気を出すことには成功しているのではないでしょうか。表紙の写真は綺麗だなあ。