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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏(4)』  ★★★★☆

イリヤの空、UFOの夏〈その4〉
イリヤの空、UFOの夏〈その4〉
秋山 瑞人

 正しければそれでいい、という度し難い視野狭窄。それで一歩でも足が前に出るのなら思い上がりでも何でもよかったのだ。カッターナイフで首筋を穿るが如きみみっちい雄雄しさで何事かを成せるなら、この世に不幸など何ひとつ存在しないに決まっていた。

「好きな人が、できたから」


 誰もいないところで読めばよかった……一人だったら絶対泣けたであろう最終巻。面白かった! 切ない! ラノベの傑作とうたわれているだけあります。漫画「最終兵器彼女」がどうやって終わったのかも知りたくなってきたよー。
 夏休みふたたび・前後編、最後の道:伊里野と一緒に逃げ出した浅羽。二人の前にはかすかな幸せとその幸せを圧倒する様々な困難が待ち受けていた。次第に破壊されていく伊里野を連れ、疲弊した浅羽が最後に辿り着いた場所は……! 逃避行の顛末を描く。
 南の島:榎本によって明かされる様々な謎。伊里野は浅羽の目の前から姿を消し、そしてその代償のように平穏な日々が戻ってきた……かに見えた。だが……! 感動の最終話。
 男の子の欲望まで丹念に描いているなあ! 戻ったらイリヤがあんなことになっていた、その間自分は何をしていたかって……浅羽ぁ(笑)! そんな生々しさも本書の魅力ですね。
 エヴァ最終兵器彼女イリヤみたいな作品をセカイ系と呼ぶらしい。ほほう。ここではあまりよいイメージではないようだ。私はこの手の作品が大好きである。ちと問題か?
 この本を読むと、愛は世界を救うなあ、と思う。愛か。愛だよね。それはセカイ系の全作品に通じるものかもしれないけど。愛ね……愛……「きみとぼく」が世界と直結するのが純愛というものかもしれない。そんな純愛って二次元のものだけなのでは? きみ=世界ってのが、通常は成り立たないからね。
 ぐたぐた言いつつも、この作品には満足だった。イリヤのまっすぐな気持ちによかったマークを!! 

 

「UFOが攻めてきて一致団結できるくらいなら、人類は、そんなもん攻めてこなくたってとっくの昔にダンケツしてたはずなんだよ」

「わたしも他の人なんか知らない。みんな死んじゃっても知らない。わたしも浅羽だけ守る。わたしも、浅羽のためだけに戦って、浅羽のためだけに死ぬ」

 私たちの最終目標は、「浅羽がいるから死にたくない」を、「浅羽のためなら死んでもいい」にまで持っていくことでした。


 すごい台詞たちよね。
 UFOが地球を攻めてきて、イリヤは最後の一人のブラックマンタのパイロットで、イリヤが負けたら地球は滅びる。浅羽はイリヤを行かせるくらいなら地球なんて滅びてもいいと言う。そんな浅羽を好きなイリヤは、浅羽のために死ぬ。死んじゃったのかなー。ラストは幾つか選択肢がある中で、一番きれいな終わり方だったと思うけど、やっぱり切ねー。