三谷幸喜『オンリー・ミー 私だけを』 ★★★★
オンリー・ミー―私だけを
三谷 幸喜
しかしこうしてみると、これほど読んで役に立たないエッセイも珍しいかもしれない。だんだん心配になって来た。
ふと考える。
いったい読者はここから何を得るのだろうか。
ここにしか書かれていない新情報というものは、はっきり言って一つもない。いや、ないことはない。しかしそれは、一人の劇作家が、実は中学生の時に長崎の海で射精していた、などという、実に個人的なしかも他愛のない情報ばかりだ。
こんな本を出していいのか。
新撰組の山南さんが死ぬ場面でボロ泣きした私である。だからといって、彼のエッセイに何を求めていたわけでもないが、それにしても、後書きがぴったりだ。面白すぎる。笑いを存分に得ましたので、満足です。
いくら普通の人だと主張したところで、やっぱり普通の人じゃないよ。ある出来事をあんな風に取って、それに対する行動がああだったら普通じゃないよ(ほぼ全てに言えること)。
時事ネタがないところも同じく世間に疎い私にぴったりで、難しいことを考えたくない時(『もしも月がなかったら』から逃げている)や、気を抜いて笑いたい時には最高の処方箋。三谷さんと西村雅彦の芝居「笑の大学」がとてつもなく見たくなった。