Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

竹本健治『闇のなかの赤い馬』  ★★★☆

闇のなかの赤い馬
闇のなかの赤い馬
竹本 健治

「神父という生き方って、凄く特殊だろ。結婚もせず、ずっと禁欲しながら神への信仰に一生を託すんだから。(中略)人間の自然な欲望を完全に封じこめるような生き方をしていると、おかしくなってくる部分もあるんじゃないかとね。いや、そもそもそういう行き方を選ぶってところが、はじめからちょっと普通じゃないよ。そういう意味では、多かれ少なかれ、神父はみんなおかしいと思うんだ」


 シスターもかい?
 むむ、こりゃだめだわ(褒めている)。麻耶はこの路線を行ったわけね。少年少女に多大なトラウマを与えてしまいそうですが、そんなエグさが大好きな私がいるよ。負のオーラを浴びたいという欲望に答えてくれるのは若竹七海かなって思ってたけど、麻耶のせいで物足りなさも感じ始めていました(『八月の降霊会』は結構なものだったけど)。そんなわけでこれ。求めていたものにドンピシャリ。ひどい(褒め言葉)!
 竹本健治といえば作家の名前を使った、ウロボロス偽書・基礎論で有名な方ですよね。私は未読なんだが。『どすこい(仮)』で取り上げられてるから読もうとしたものの、割と分厚かったのでやめた覚えが。
 聖ミレイユ学園で神の怒りとしか思えない悲劇があいついだ。ウォーレン神父は校庭の真ん中で落雷に遭って焼け死に、さらにベルイマン神父が密室と化したサンルームで、人体自然発火としか考えられない無残な焼死体となって発見されたのだ。「汎虚学研究会」はみんなからキョガクの連中とよばれる、ちょっと浮世離れしたメンバー四人(タジオ、マサムネ、フクスケ、僕)で構成されている。部長は僕、室井環。中でも好奇心のかたまり、フクスケは女ホームズと化し、ワトソン役に僕を指名した。ベルイマン神父の死は殺人に違いないというのだ。僕は夜ごと見る、狂った赤い馬の悪夢でそれどころじゃないのだが……。(Amazon
 ミステリの解が素敵過ぎる。犯人、動機、殺害方法、全てに敬意を表したいね。……バカミスだと言いたいのなら言えばいいさ! 私も冷静な頭で考えればそう言うだろうさ! しかし、これは少年少女、かつて子どもだったあなたのための本なのですから! 童心に戻って読めばいいじゃない。皆でショックを受けようよ(笑)でも「泰然」や「慨嘆」なんて言葉、滅多に使わないよな。子供向けにしていないってあとがきで明記してるくらいだもん。
 男同士にせよ女同士にせよ、同性愛には耽美なものを感じずにおれません。タマキのツバサに寄せる想い(ってほどではなくとも)とか。皆のアイドルツバサ。麻耶は男同士よりも女同士がお好みか……ウップス! こんなんでいいのか自分……こんなんで……。

 

 遅く起きた朝、タマキが食べた大盛りランチにまで繋がりあったとは! 「キョガクの連中は寺堂院や但馬にしても、普段、何考えてるか分からないからな。」という台詞に、額面以上の意味が込められていたなんて! 門坂の包帯は二重に伏線だね。
 ツバサは女子・男子におさまらず、聖職者までもを虜にしちゃってたんだね……。「組織をまとめあげて、指揮、先導するタイプ」ってのはやはり羽柴先輩? ひーえー。
 寮生の殆どが協力し、ガラス張りのサンルーム内の神父を鏡を使って焼き殺す……すごいなあ。一度、生き物じゃないものを対象にして私もやってみたい。