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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

我孫子武丸『殺戮にいたる病』  ★★★★

殺戮にいたる病
殺戮にいたる病
我孫子 武丸

 そうだ。女は、本当に美しい女は、どんな時でも大理石のように毅然とあるべきだ。氷のように冷たい硬質の輝きは神々しく、卑俗な者が近づくのを決して許さない。神に選ばれたものに近づけるのは、同じく神に選ばれたものだけだ。


 サークルの先輩に薦められて読んだ。これはミステリなのか? と思いつつ、最後の最後でどんでん返し。ミステリだ! いやー騙された。久しぶりにこういう騙され方を味わったので楽しかった。『イニシエーション・ラブ』みたいに、二度読みしたくなる。
 永遠の愛をつかみたいと男は願った――東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔! くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。(Amazon
 ホラーになってるけどいいや。中身は犯人・蒲生稔、息子が殺人者ではないかと疑い出した蒲生雅子、付き合いのあった看護婦が被害者となり被害者の妹・かおると犯人探しをする元刑事・樋口武雄の三人の視点が交互に入れ替わって進む。稔は真実の愛を求め女たちを殺害後に愛したり、乳房を切り取って持って帰ったり、挙句の果てには性器まで……とそこら辺の描写は生々しく気持ち悪いので、グロいのが苦手な人は読むべきじゃないかも。私は生きている人間ではない限り、残酷な描写は大丈夫なのだが。こいつ狂ってるよ! とな。ネクロフィリアカニバリズム、読めるけど無理だ。
 我孫子で既読なのが『8の殺人』『探偵映画』だけの私が言うのもなんだけど、彼の作品に漂うおちゃらけた感(ユーモアと言え)が嫌いだった。『探偵映画』はそのノリでいいけど、8の方はれっきとした殺人事件だしさ……。どこかうけつけなかったんだな。でも、本書ではそんなユーモアどこにも見当たりません。ずっとシリアス。だからかしら、素直に面白かった。トリックの素晴らしさのおかげかもだが。我孫子らしさがそのユーモアなのかもしれないけど……他の作品読んでまた考えてみよう。

 

  稔が雅子の息子だと信じて疑わなかったのに……! 誰だよ信一って(笑)! ずっと騙されてたんだなあ。雅子も、勘違いしてたんだ。稔の犯行に気づいた信一が、ホテルまで追っかけてったのよね? 斎藤さんが助けにきたのかと思って、しかも殺されちゃって、ちょっぴり好きだったから(おい)がっかりしていたものです。