Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

重松清『疾走』  ★★★

疾走
疾走
重松 清

「だから……寂しいひとなんだ、あのひとは」
「寂しがってないけど、寂しいの?」
「寂しがってないから、寂しいんだ」

 優しい子どもだったおまえたちが、ようやく「ひとつのふたり」になって、再び「ふたつのひとり」になってしまう――


 き、きっつ……!
 タイトルが疾走だから、すかっと爽やかな物語を想像していた。装丁の絵を見れば、そんな甘いもんじゃないと分かったはずなのに。かなりきつい。人生が転がり落ちる様を描いたものと言えば私が読んだのは奥田英郎『最悪』くらいだが、これよりも遥かにきつい。主人公が14歳の少年で親近感が云々、だけではない。面白かったけど、ひたすら痛く哀しいので注意。こうなるしか他に道はなかったのか?
 舞台は海と接しているまち。埋め立てた部分は「沖」、元からあった部分は「浜」と呼ばれていて、「浜」は「沖」を下に見ている。「浜」に住むシュウジが主人公。シュウイチという頭の良い兄がいる。人に媚びる友達・徹夫、中学に入る前、教会で出会った神父と少女・エリ。鬼ケン、アカネ、みゆき……。犯罪へとひた走る14歳の孤独な魂を描いて読む者を圧倒する現代の黙示録。(無理だったのでAmazon
 主人公を呼ぶ言葉は「おまえ」。この小説は二人称と言うのかなあ? 誰かがリュウジについて語っているのか、それとも視点は神なのか。それは後々(だからKADOKAWAミステリに連載されてたの? 全然関係ない?)。『ベルカ、吠えないのか?』の犬への問いかけみたいだった。あと北村薫『ターン』も「君」だか何だか使ってて読みにくかった覚えが。
 とにかくものすごい筆力。その分悲惨さが強く伝わってくるから辛いんだ……。孤高・孤独・孤立の違い、よくわかりました。

 

 みゆきも腐乱死体になっちゃったし、シュウジは警察の銃弾を浴びて死んでしまうし、何だかなあ……アカネの子が無事に生まれ、「望」というものすごい名前(笑)をつけられてすくすくと育っているみたいだから、まだ救われたけど。エリも元気みたいだし。
 語り手は神父だったんだねー。特定の人物として書かれないと思ってた。