Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

時雨沢恵一『リリアとトレイズ (1)』  ★★★

リリアとトレイズ (1)
リリアとトレイズ (1)
時雨沢 恵一

「リリアちゃんがトレイズ君を襲わなければ平気でしょ」
「襲わないわよ!」
「たとえばそう。寝ている無防備なときとか」
「だー! なんでそんなコトしなくちゃいけないにのよ?」
 トレイズは何も言わず、静かにお茶をすする。


 キター! というか、随分前から来てたね。刊行されたの五ヶ月前です。時雨沢氏の大変なファンである私は(そのくせに一冊も本を持っていない駄目なファン)貪るように読みました。キノシリーズではなく、アリソンシリーズの“正統なる”続編。多分にネタバレを含むので、アリソンシリーズ未読の人は既に逃げてください。
 三つの物語を経て、ようやく結ばれたアリソンとヴィル。特にアリソンを愛してやまない私はものすごい勢いで祝福しましたともさ。ヴィルは死んだことになってるけど、現在も勿論アリソンとラブラブ(笑)で、ベネディクトとフィオナの息子・トレイズもそれを知っている。知らないのは二人の娘・リリアだけ。表紙に描かれてるのはリリアちゃんなんだけど、やっぱり絵変わったよなあ……。私はアリソン初期のあたりが一番好きだから少し残念。カラーの人物紹介のアリソンは好きだ。ヴィル、老けたなあ(笑)そして今でも主導権は彼にあるようだ。
 さて。あらすじ。せっかくの夏休みなのにアリソンは仕事で家を離れることに。不満たらたらなリリアにアリソンが提案したのは、トルカシア国のラーチカという町への旅行。トレイズと二人でなら行って来ても良いという。トレイズが気に食わないリリアはやっぱり不満だが、結局旅行に行くことに。しかしそこでは何かの陰謀が渦巻いていて……。
 まだ上巻なので、リリアシリーズ全体のプロローグって感じ。序章は前に読んだぞ、と思っていたら分かりやすくするために入れたんだと。アリソン&ヴィルとは逆に、トレイズの方がリリアにお熱です。でも振り回すというか、無鉄砲ぶりはしっかりと受け継がれているみたい。ああ、トレイズ黒髪なんだ……もっとベネディクトの特徴の色濃い男の子だと思っていたが、のんびり冷静でかわいいやつでした。黒髪だし(そこか)。
 時雨沢節は健在。台詞回しとか、ユーモアがあるよなあ。地の文も好きなんだけどさ。もう全部好きだよ。下巻が早く届きますように! 

 

『心配なのは分かったけど、それだけじゃないでしょ? せっかく秘匿回線なんだから、他に言うことは?』
『ああ、もちろんまだある』
『そうよね!』
(中略)
『心から愛しているよ、アリソン』


 131ページからの二人のやりとりに乾杯! 中略部分にはヴィルの業務連絡が入るんだが、電話を切るときにはこれですよ。アリソンも小躍りしちゃうわけですよ。やっぱりこの二人の方が良いよ! もっと出ようよ!
 えー下巻の為にあらすじを追加。ラーチカはイクス王国に観光客を取られてしまい、閑散としていた。そんな街中を歩いていた二人が見つけたのは観光飛行の看板。最近乗っていないので高いお金を払ってもいいや、と乗って、リリアが操縦をやらせてもらったりして、帰る途中に湖面に水上機を発見。飛行士のマテオが好意で救助しようとしたのに、とち狂った軍人に撃ち殺されてしまう。二人はからくも島へと逃げるが、飛行機は銃撃されて壊れ、町まで歩くことに。
 夜、森の中にぽつんと建っていた無人の家に入り込んで眠る二人。朝起きると住人である通称“導師様”がいた。車を貸し、飛行艇へ乗れば町に戻れるだろうという言葉に二人は従うんだけど……。無理だ、難しい。覚えているうちに下巻を読みたいです!