Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』  ★★★

ベルカ、吠えないのか?
ベルカ、吠えないのか?
古川 日出男
 二十世紀は二つの大戦が行われた世紀だった。いわば戦争の世紀だった。しかし、同時に、二十世紀は軍用犬の世紀でもあったのだ。

 オレハ犯ス、とお前は吠えた。
 オレハ孕マセル、と犬神よ、お前は吠えた。
 生キルタメニ!

 イヌよ、イヌよ、お前たちはどこにいる?

 うぉん。
 そのひと言で感想を終わらせても良いのではないか? と思わずにはいられない、直木賞候補にもなった本書。初・古川日出男。これが直木賞ってすげーな。これを歴史小説にカテゴリ分けする私もどうかと。
 本の雑誌の高評価、好きな読書ブログさんの好き作家ということでチャレンジしたんだけどさ。ふー。達成感はあるな。『アラビアの夜の種族』『サウンドトラック』『沈黙』『アビシニアン』は読んでみたいんだが、どうも重いようなので比較的軽いと言われている『gift』でも探してみようか。……今度ね。京極並みにスパンが必要。
 うぉん。私に言えることは何もありません。あらすじ放棄。
 1943年・アリューシャン列島。アッツ島の守備隊が全滅した日本軍は、キスカ島からの全軍撤退を敢行。島には「北」「正勇」「勝」「エクスプロージョン」の4頭の軍用犬だけが残された。そしてそれはイヌによる新しい歴史の始まりだった――。(文芸春秋
 第二次大戦からソ連崩壊まで、犬とともに歩む歴史。日本人ヤクザの娘の犬としての生き様。目次を見れば一目瞭然だが、二つの物語が交互に語られる(「」付きのが後者)。視点は神で、たまに犬も交じる。読みにくいぞ。
 しかしこの読みにくさ、視点のせいだけじゃない。内容が内容で(現代史を勉強してなかったことを悔やんだ)、300ページ強のくせに重いったら。ぽこぽこ増えていく犬の系譜が欲しい。マジで。途中であっさり諦めた。そうだ、世界地図もつけてくれ。出てきた地名に註をつけてさ。
 あとはものすごいエネルギー。これがあったからこそ読み通せたのだが、疲れたぞ。春樹チルドレンらしいがよくわからない。伊坂や本多のような春樹っぽいチルドレンしかわからない。
 面白かったのか? と尋ねられたらどう答えるべきか。「ベルカ、吠えないのか?」と言ってやればいいのかな。とりあえず吠えとけちくしょー。うぉん。