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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』  ★★★

三毛猫ホームズの推理
三毛猫ホームズの推理
赤川 次郎

 一体こいつはどういうつもりなんだろう。本当に何かを教えようとしているのだろうか? ――ホームズはまた目を閉じてしまった。そうなると、もう何の変哲もない猫である。

「本当におまえも妙な奴だよ。森崎さんじゃないが、その小さな頭の中で何を考えてるんだい?」


 『8の殺人』において、本書は完璧な密室を描いているとあったので借りてみた。本当に完璧だ! 『マレー鉄道の謎』を読んだ後だったので大して意外性を感じられなかったのが残念ではある(読む順番間違えてる、明らかに)。
 血を見ただけで卒倒する女性恐怖症の片山刑事が、あろうことか、女子大生殺害事件に取り組んで、女子大寮に張り込むハメとなった。密室で殺された第二の被害者・女子大教授が飼っていた三毛猫をひきとった片山は、このホームズが並みの猫でないことに気がついた!(裏表紙)
 割と軽めの文体で、読みやすい。古さを感じはしても、目をつぶれる程度。いつの時代に読んでも違和感がない、っていうのはやっぱり無理なのかな。時代小説は別として。
 登場人物の一人に過剰に感情移入することはなかったので、公平な見方ができたのではないかと。でも黒幕が誰か、ってのは最初から感づいちゃうよなあ。あれで何もないわけないじゃない! てな。
 恋愛面でどことなく安っぽい雰囲気が漂っていたかと思えば、最後はかなりシビア。それでいいのかい、と二人が近づいたり遠のいたりする度に突っ込みをいれてしまうね。山ほど有るシリーズを読み通すつもりはないにしろ、また面白そうなのがあったらピックアップしてみよう。

 

  殺害する相手に中から密室をつくらせ、その部屋自体をクレーンで吊り上げて、奥行きを利用して転落死させてしまう。細長い部屋だからできたこと。それにしても、完璧に密室だね。密室の中でいかに殺すか、というのを考えるとああなるのか。ふ~む。死体になりすましていた弟との入れ替わりだった、という説が出てきた時には、ちょっと待った! と言いたくなったけどね。まさかあれで終わるはずもなく。よかったー。
 片山と雪子が事件の真っ最中だってのに、雪子の部屋やホテルでやろうとしていて、ものすごい執念だなあと思った。そんなんでいいのかよ。
 そう、雪子みたいな、絶世の美女は影があるって決まってるものよね! 売春リーダーは彼女以外に考えられなかったよ。ミステリに不可欠な要素ですわね。美女と密室(笑)