浅田次郎『プリズンホテル秋』 ★★★★☆
プリズンホテル秋
浅田 次郎
「いえ、たとえどのような罪を犯されても、お客様の人生はお客様おひとりのものでございます。尊い、かけがえのない、誰のものでもない人生でございます。出会いがしらのパトカーなどにからめとられてなるものですか」
「タキシードを着た極道でございます。ホテルマンという男の道を極めようとしている、ひとりの極道でございます」
シリーズ第二作は花沢支配人が名言を沢山残されたので、抜き出してみた。こんなホテルマンいたら惚れちゃうわ! それにしても、面白いなこれ! 天才だな! 声を出して笑い、涙を流して泣く。漢気を持つ男女。感受性を豊かにしてくれるのではないだろうか。
仲オジとみすずの関係が気になった小説家の木戸が、愛人・清子の娘・美加を連れて訪れたプリズンホテル。今回は売れない歌手とマネージャー、大学教授風の怪しげな男、挙句の果てには警視庁青山署と大曽根組のご一行が客として泊まり合わせることに。トラブルが起きないはずがない!
Amazonのレビュー読んだら、結構皆評価低いのね! びっくりしてしまった。木戸の性格の悪さには私も閉口するけど、彼なりの愛情表現があってよかったと思うよ。もうエンターテイメントなんだから素直に楽しんだもの勝ちです。オイルフォンデュの惨劇ったら! 下ネタもですよ。あの人も愛用していたパンツに三回もイッてしまったあの人。あそこらへんの会話最高だ。
私が泣いたのは二箇所。その部分だけを抜き出して考えると、本当にありきたりな泣かせ所なのに(舞台は破天荒ですが)、きっちりと感動できてしまうのがすごい。小説で泣けるって幸せなことだなあ。
繁が親孝行な息子になってくれて読者としては嬉しいわ(笑)! 語尾の「ー」が読みにくさを演出しているけど許しちゃう。母も強し。木戸が美加におとうさんと呼ばせるところではぼろぼろ泣いてしまったよ。以上私の泣き所でした。