Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

怪奇幻想

小野不由美『過ぎる十七の春』  ★★☆

過ぎる十七の春 小野 不由美 ――この子はわたしのたったひとつのものです。 力と力の拮抗で子供の手首を裂いた血が流れて伝わった。 ――母親とはその程度のものか。 ――なにを。 ――わが子の命よりわが身の執着のほうが愛しいか。 ラノベ読みたい~と物色してい…

貴志祐介『ISOLA―十三番目の人格』  ★★

ISOLA―十三番目の人格(ペルソナ) 貴志 祐介 同じ文献によれば、古くから以心伝心という言葉で知られているように、激怒、悲嘆、憎悪といった強い心的エネルギーをとのまった感情は、人間の心から心へと直接伝わることがあるのだという。そうした能力は、通常…

朱川湊人『花まんま』  ★★★☆

花まんま くすぐったいと言うより、もっと深い感覚――あの生き物から痺れるような何かが伝わり、それが骨にまで染みたような気がする。その痺れに耐えていると、やがて臍下あたりから、何かぬるい水が染み出して来るような……どこか甘い感じさえする、不思議な…

山田悠介『Aコース』  ☆

Aコース 山田 悠介 「ああ!」 「ちょ、ちょっと!」 止めたのは憲希だった。ピンクのパジャマを着た髪の長い女性が、窓から飛び降りようとしているのだ。 「もう訳がわからん」 「何してるんですか!」 「こんなにお前に手こずるとはな……さすがだぜ」 頭を…

綾辻行人『最後の記憶』  ★☆

最後の記憶 綾辻 行人 ――あれはヒトの血の色。 ……ああ、母さん。あいつが来る。こんなところにまで、僕を追いかけて。 ――あれはヒトの血の。 母さん、あいつが来るよ。あなたの記憶の中から溢れ出した“恐怖”が、もうすぐここに。今度はきっと、この僕の身体…

瀬名秀明『パラサイト・イヴ』  ★★★☆

パラサイト・イヴ 瀬名 秀明 もうすぐだ。彼女は全身を震わせ、利明の声を、表情を、体温を思い浮かべた。 利明のような男が現れるのを待っていた。利明こそ、本当の彼女を理解してくれる男だった。絶対に逃すわけにはいかない。 利明とひとつになるのだ。 …

畠中惠『ぬしさまへ』  ★★★

ぬしさまへ 畠中 恵 ため息も人がいないところで、こっそりと遠慮がちにつく。ただ妖たちにだけは、時々心掛かりをこぼすことがあった。 (それなのに、頼りの妖たちが突然いなくなったら、私はどうなるのかね) 小さい頃からいつも変わらず一緒だったのに。…

伊島りすと『ジュリエット』  ★☆

ジュリエット 伊島 りすと 血のようだった。 貝の血だった。 それが地面に向かってぽとぽとと滴り落ちている。 健次はその姿をじっと見つめた。 濡れた糸に向かってカミソリの刃を近付けようとしたとき、また風が吹いてきた。 揺れる、と思った瞬間、すっと…

畠中惠『しゃばけ』  ★★

しゃばけ 畠中 恵 「血の臭いがする! 一太郎ぼっちゃん、怪我をしたんですか?」 「もう、ぼっちゃんはよせと言っているのに! いつまでも子どもじゃぁないんだから」 言い返した若旦那の言葉なぞ聞いてもいない。あっという間に佐助の手が伸びて、赤子のよ…