Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

津村記久子『浮遊霊ブラジル』  ★★☆

 今気づいたけどこの本のタイトル「幽霊」じゃなくて「遊霊」なんだな。

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル

 

初の海外旅行を前に死んでしまった私。幽霊となって念願の地を目指すが、なぜかブラジルに到着し……。川端賞受賞作「給水塔と亀」を含む、会心の短篇集!

【収録作】
「給水塔と亀」…定年を迎え製麺所と海のある故郷に帰った男。静謐で新しい人生が始まる。〈2013年川端康成文学賞受賞作〉

「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」…静けさのないうどん屋での、とある光景。

「アイトール・ベラスコの新しい妻」…ウルグアイ人サッカー選手の再婚の思わぬ波紋。

「地獄」…「物語消費しすぎ地獄」に落ちた女性小説家を待つ、世にも恐ろしい試練とは。

「運命」…どんなに落ち込んでいても外国でも、必ず道を尋ねられてしまうのはなぜ?

「個性」…もの静かな友人が突然、ドクロ侍のパーカーやトラ柄で夏期講習に現われて…

「浮遊霊ブラジル」…海外旅行を前に急逝した私。幽霊となって念願の地をめざすが。(Amazon

 先週末くらいに読みました。軽めの短編集。わたしは大学生の女子が想い人に認識されるために派手な格好をする「個性」が好きだった。これはかわいかった。「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」もよかった。なのになぜ評価が低めなのかというと、この短編集は全体的に一歩引いた脇役の視点が多くて、文章に熱さや切実さがあまりなかったからです。わたしは津村さんだとデビュー作やコピー機の話や『ミュージック・ブレス・ユー!』が好きなんである。当事者が想いをぶわーって語る系の話が。