村上春樹『レキシントンの幽霊』 ★★★
同時期に読んだ『TVピープル』より余程よかった。特に表題作は好きと言ってもいい。男性作家が国外の同性の友人の家で留守番をするというシチュエーションに、堀江敏幸の『熊の敷石』を思い出したりした。そちらも好きです。
古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極などへ行こうとしたのか…。次々に繰り広げられる不思議な世界。楽しく、そして底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録。(Amazon)
あとこちらに収録されている短編の方が文章がうまいと思うことが多かった。執筆時期のせいかもしれないが、それをちゃんと確認するほどの熱心さはないので分からない。しかし春樹の女性視点が好きではないことに変わりはありません。
世代的なものだと言われたら反論できないが、村上春樹の書くものには家父長制の趣があり、伊坂幸太郎や本多孝好、舞城王太郎あたりのいわゆる春樹チルドレンと呼ばれる作家たちにもその色があると思う(彼らの作品を読んでいたのは10年前なので、今はまた変わっているかもしれない)。わたしは思想的に合わない。