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続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

フレドゥン・キアンプール『幽霊ピアニスト事件』  ★★★

幽霊ピアニスト事件 (創元推理文庫)

幽霊ピアニスト事件 (創元推理文庫)

青年ピアニスト、アルトゥアは死んでから50年後の世界にいきなり蘇った。音楽大学の学生たちと知り合い、共同生活をはじめるが、常に古風な舞踏会用ドレスを着ている少女や、双子の霊媒たちと過ごす新しく愉快な人生には、なぜ事件ばかり起きるのか。音大でのリサイタルの妨害や美人ピアニスト殺し、そして自分が蘇った理由を解明するため、アルトゥアと音大生たちは走る走る!(Amazon

 全然小説読むつもりじゃなかったけどちょっと時間が空いたから軽めなやつ読んでみよっかな、ミステリなら軽いだろクラシック込みだし、と手に取ったらクソ重かった。こちらの記事を読んで購入しました。

young-germany.jp

 小説としては上手くないかな……でもたぶん翻訳のせいではないだろうと思いつつ読み進めていたら元ピアニストが書いていた!笑 そいつはすごいな! 元ピアニストが描くピアニスト小説!

 あくまで小説としてすごく面白かったかと問われたらわたしにとってはYesではないんだけど(文章的な粗が気になってしまって)、作中での芸術の語られ方には鬼気迫るものがあり、該当人物の行動を肯定するだけの熱量と説得力があった。一歩間違えれば荒唐無稽になりそうなところが、なっていないんですよ。まあ背景が重すぎるしな。

 巻末には登場曲リストがついていた。これは嬉しい。シューベルトピアノソナタと怒りの日は聞きながら読んでいた。このピアノソナタ、ちゃんと聞いたことなかったんだけどすごくよかったです。作者自ら使用曲を収録したCD出してるのもすごい、聞きたい。曲を聴いてから再読する楽しみがあるよね。

 翻訳者はクラウス・コルドンの三部作の人だった。解説にドイツ音楽小説紹介が載っているのでおすすめ。いい読書ガイドです。