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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

松浦理英子『奇貨』  ★★★★

奇貨 (新潮文庫)

奇貨 (新潮文庫)

男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田をとらえたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情だった。女たちの世界を観察することに無上の喜びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれる。熱い魂の脈動を求めてやまない者たちの呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説。著者26歳の時に書かれた単行本未収録作品も併録。(Amazon

 文庫落ちしていたので買ってきて、久々に再読。いやー松浦さんはさすがの面白さですね(ただし気持ちよくはない)。性癖にも正直……彼女、一貫して〈受け〉の女性視点しか書かない……いや、親指Pはそうでもなかったか? 彼女の完全受身姿勢な主人公がダメで読めない、という人もいてそれはすごく分かるなーと思うくらい徹底して受け派よね。『ナチュラル・ウーマン』で攻めの女性に言わせてたけど、攻めを奴隷化するわけだからね。

 表題作の主人公・本田は珍しく――どころじゃないや、著者初の男性主人公じゃないの? この主人公、シェアメイトの女性・七島に親しい女友達ができたことですごい嫉妬するんですね。女同士の友情に。それで色々こじれるんだけど、最後の方で、「きみとずっと一緒に暮らせればと思っていた」と告白する。それに対する七島のアンサーが下記。

「あんまり大袈裟なことは言わない方がいいよ。本田さんだって性的にも人間的にも好きな人ができたらわたしとは暮らさないでしょ? わたしなんて本田さんにとって、本来そばにいるべき誰かの穴を埋める補欠要員しかないでしょ?」

「そういうことじゃない。(中略)おれは性的魅力に富んだ女を妄想することはあるけど、『本来そばにいるべき誰か』なんて理想を思い描いたことはないよ。」(文庫P105)

  私もどちらかというと本田寄りの、ヘテロセクシャルだけど積極的な性欲が全然なくて異性との結婚欲が皆無で、というかミサンドリーが強くて性的な好みと人間的な好みが両立しえないんだけど、このくだりにすっっっごく頷いてね!! 分かるよ! 本田! 私と暮らそうか! と言いたくなるくらいでしたよ。いや、女友達と暮らしたいけど。笑 でももし夢が叶っても「補欠要員」でしかないんだろうなーと思う。残念ながら、私は本田のように家を買う甲斐性も、そのような機会にも恵まれなさそうだけど……。

 てか「変態月」って26歳時の小説だったのか! 今Amazonを引用して気づいた。全然意識してなかった。フォントが教科書体っぽいやつで、ちょっと読みにくいんだけど、当然のごとく女性同士の話です。