麻耶雄嵩『隻眼の少女』 ★★★★
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/03/08
- メディア: 文庫
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山深き寒村で、大学生の種田静馬は、少女の首切り事件に巻き込まれる。犯人と疑われた静馬を見事な推理で救ったのは、隻眼の少女探偵・御陵みかげ。静馬はみかげとともに連続殺人事件を解決するが、18年後に再び惨劇が…。日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した、超絶ミステリの決定版。(Amazon)
大変あっぱれでした。麻耶のミステリの中には探偵も助手もいない。信用に足る人物は皆無。それがよくわかりました。ラストは倒錯のひとことです。お前らそれでいいのかよ!!!!笑 いや皮肉でしょうけど。ミステリの登場人物に人間性が欠けているとか、そういうことを言うのはナンセンスだな。ナンセンスだと思わされるな。第一部を読み終えた時点で「ラブロマンス向いてないね」って呟いちゃったの、取り消すよ。
第一部の解決部までは、理論偏向だな〜これで終わりなのだとしたら新境地や〜と思っていたが、そんなことはちっともなかったぜ!! 解説にあったように、彼の小説に特権的な人物はいないというのがその通りなのでしょう。ミステリの探偵助手システムを逆手にとって遊ぶスタイル。最初から疑いしかなかったから期待以上でありがとうございましただけど、初読の人はともすると投げるんじゃねえのか。まあ面白い作家だと思うので、未読の人はぜひデビュー作からお読みください(本書はシリーズではないのでいきなり読んでもOKですが)。
Amazonレビュー見てみたら、麻耶読者と初読の人のコメントが見事にまっぷたつで笑った。そりゃそうだ。そりゃそうだよ!! 麻耶がどんな作家か知ってるのと知らないのとでは大違いだよ! 個人的には、ミステリ好きの人は許すと思いますが、ミステリを読み慣れていない人はつまらない、アンフェアだと言うと思います。
この本が出た当初、「何でこんな中二設定全開のタイトルなんだwww」と友達と爆笑したのが思い出されて懐かしい気持ち。五年前ですか、発売……その頃はまだミステリ界隈の友達と繋がりがあったのね。笑
パニックもののセオリーとして、なるべく早くに人を殺し、その後は適度な感覚で殺して行くっていうのがあるけど、一人目の被害者が出てから現場入りし、二人目が殺され、解決したかと思いきや三・四人目が殺され、挙げ句の果てには語り手の助手が自殺未遂して記憶喪失、記憶が戻ったと思ったら探偵は死んでいた……この時点ですごい展開だよ。すばらしくエンタメだよ。でもその先があるんだよ。みんな「探偵は死んだと見せかけているだけだろう」と思うじゃん、それをね、こういうふうに期待に応えるんだって……。あっぱれです。
まあ何にも解決してないのかもしれないけどな!!