吉本ばなな『哀しい予感』 ★★★★
- 作者: 吉本ばなな
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1991/09
- メディア: 文庫
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弥生はいくつもの啓示を受けるようにしてここに来た。それは、おばである、ゆきのの家。濃い緑の匂い立ち込めるその古い一軒家に、変わり者の音楽教師ゆきのはひっそりと暮らしている。2人で過ごすときに流れる透明な時間。それは失われた家族のぬくもりだったのか。ある曇った午後、ゆきのの弾くピアノの音色が空に消えていくのを聴いたとき、弥生の19歳、初夏の物語は始まった。大ベストセラー、そして吉本ばなな作品初の文庫化。(Amazon)
24歳のときの作品だって……24歳……24歳か……デビューしたとき23歳か……。解説を読んで自分の年齢と比べて失われた若さ(と何も残してこなかったこと)を思ってしばし呆然とした。笑
昨日『N・P』読んだばかりで、そっちは全然好きになれなかったんだけど、この本は読み初めからすんなりしみ込んできて、最後まで好きだった。文章もよかった。ただ、終わり方が唐突なのはさておくとしても、文庫の後書きがすぐ隣の奇数ページから始まるのは本当にどうかと思う。おかしいだろ。次の偶数ページからにしてくれよ。余韻台無しだよ。
これも家族の話だった。私、家族の話は素直に読めるし弱いんだよね。自分が家族愛しか身近に感じられないからだろうな。しかも魂の格が高い弟が出てきて、出たー、男兄弟のいない(とおぼえしき)女流作家が描く最強の弟キャラだ!(例:江國香織、小川洋子)と身構えたり拍子抜けしたりした。でも比較的現実味があったような気がする。肉体接触を出してきましたからね。笑
全編にわたって若さゆえの輝きと、現実感の希薄さが、きらきらと眩しかった……。もう戻れないのだと突きつけられている気分がしました。そんなエネルギーに満ちた24歳ではなかったけどな!