Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

幸田文『おとうと』  ★★★☆

高名な作家で、自分の仕事に没頭している父、悪意はないが冷たい継母、夫婦仲もよくはなく、経済状態もよくない。そんな家庭の中で十七歳のげんは、三つ違いの弟に母親のようないたわりをしめしているが、弟はまもなくくずれた毎日をおくるようになり、結核にかかってしまう。事実をふまえて、不良少年とよばれ若くして亡くなった弟への深い愛惜の情をこめた、看病と終焉の記録。(Amazon

 初めての幸田文。1957年刊行とのことなので現代小説の括りに入れた。
 とはいえ1980年以降の小説を読み慣れた身にとっては前半のテンポには乗り切れず、だらだらと読んでいたけれど、結核と診断されて以降、島田髷のシーンからはぼろぼろ泣きながら読み終えた。自分が姉で、弟持ちの二人姉弟だから特に胸が突かれる。
 しかし家事と看病を一手に担うげんの姿が現代からしてみれば半ば虐待で、良い話だなと言い切ることはできませんね……。碧郎の前にげんが不良になるだろこれ。負担かかりすぎだぞ。弟の死亡告知まで姉に聞かせるとは何事だ。父不甲斐なさ過ぎ!!