Memoria de los Libros Preciosos

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藤原伊織『ダナエ』  ★★★

世界的な評価を得た画家・宇佐美の個展で、財界の大物である義父を描いた肖像画が、切り裂かれ硫酸をかけられるという事件が起きた。犯人はどうやら少女で、「これは予行演習だ」と告げる。宇佐美の妻は、娘を前夫のもとに残していた。彼女が犯人なのか―。著者の代表作といえる傑作中篇など全3篇収録。(Amazon

 表題作は大変藤原さんらしい女性の使い方だと思いますね……。男であそこまでの献身を強いられる、性的犯罪や虐待および死をもって表現させられるキャラクターはいないだろ。いや女性の名誉を守るために自殺した男はてのひらの闇にいたけど。
 いかんせんレイプや性的虐待やハラスメントに遭う女性が多すぎる。「いざとなったら風俗」を男性作家が女性キャラクターに言わせるのも私は嫌いである。このような女性の使われ方には大変腹が立つのですが、作家としてはとても好きなんだよな。ホモソーシャルのハードボイルドだね。
 『シリウスの道』が一番本領発揮してるかなあ、企業内部のあれこれをエンタメとして書くのがとても上手いし、何より文章上手いしなー。『遊戯』終わらせてほしかったよなあほんと。