Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

津原泰水『妖都』  ★★★★

“死者”が東京に増殖し、街に自殺者が溢れ始めたのは、CRISISのヴォーカリスト、チェシャが自殺してからのこと。両性具有と噂された美しく妖しい彼が遺した歌「妖都」は、ヒットチャートを上昇中。“死者”が見える少女たちを取り巻く恐怖と加速する謎。明らかになる巨大な真実。世界をも震撼させる怪奇幻想小説の傑作。 (Amazon

 面白かった……記憶にあったより数段面白かった……泰水名義のこれまでの著作を『ペニス』以外読んでいるから楽しめた部分もある(クロクロのあとがきとの比較とか、大宮の伯爵とか、自転車好きだよなとか)けど、エンタメとしてとても面白かったですね。一気に読んだわ。一人称じゃないやつはストーリーに徹している感があるねえ。『少年トレチア』もこんなんじゃなかったっけ。私は叙情のある一人称の文章が大好きなんだけども。
 解説の、「南米文学に近い物に感じる。幽霊が日常生活の中で、当たり前に、空気のように生者と共にある世界」というのに膝を打ちました。確かにねー。みんなそこまで驚かずに馴染んで行くよね。
『バレエ・メカニック』と同じ東京という都市全体の機能感だったり、渋谷区の大学って出身校でしょ? と思ったり、やっぱりバンドの話が出てきたり、同性愛や近親相姦への「禁忌」(同性愛に対しては皮肉です)が希薄だったり、あとはもちろん神話に取材してたり、デビュー作に全部詰まっているというのは本当だなあと思いました。少女小説は読めてないんだけども。