Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』  ★★★★★

水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)―。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。(Amazon

 とりあえず読め案件。
 短編集なので開いたところから読んでたら「妹」が老人やおいでビビった。なんと。これはちょっとすばらしいな。なかなかすごい話を書いている。賞をとって日本語にまで翻訳されている人に言うことじゃないけど。翻訳もいいですね。うまいです。岸本佐知子さん、名前だけは知りつつ一冊くらいしか訳書読んでないはずなんだけど、この翻訳はすごく好みだから、他の本も読んでみようかなあと思っている。
 女同士の話にはどことなく松浦理英子が『裏ヴァージョン』グラディスとトリスティーヌを思い出すな。こっちはリアルアメリカンによる。女同士の話が多かったけれど、大概未来はなく、ふとすれ違ったときに一瞬だけ交わる、という感じ。それに対して老人男性やおいの新しい世界感よ……笑 作者が女性だからかもしれないですね。
 経歴的に、フェミニズムパンクを通ってきた作家なので、その意味で地雷を踏まれることはありません。ご安心を。

「妹」読み返したけど男同士のコレラ時代の愛を読んでいるみたいな気分になったよ!! ほんの短い短編なんだけど!笑