津村記久子『とにかくうちに帰ります』 ★★★☆
- 作者: 津村記久子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/02
- メディア: 単行本
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豪雨で帰宅困難になった人たちの心模様を描く表題作はじめ、それぞれの日々の悲哀と小さな誇り、職場の人たちとのすれ違いや結びつきを丹念に描き出す6篇。働き、悩み、歩き続ける人たちのための物語集。(Amazon)
最初に収録されている「仕事の作法」、田上さんの話がピリリと辛かったので多少身構えていましたが、全体的に穏やか方面でした。嫌な人間は出てくるけど主人公が振り切れない!笑 いやー間宮さんの短編のFAX番号が分からない話、心当たりありすぎてヒヤヒヤしたよー。「アレグリア〜」の最終日に反乱起こされた話もそうだけどさ、ああいうときに限ってクリティカルではないところでトラブったりすんだよね……嫌だよね……。このシリーズのいいところは、田上さん・浄之内さんとの関係が良好なところ。
「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」、これスケートファンじゃないと面白くないんじゃないかwww 一時期フィギュア男子にどっぷりだった身としてはすんごく笑えたけどwww 作者それなりに(主人公程度は)観るんだろうな。ヤグディンは見てるだけで面白いというとこでハッとして、その後はひたすらニヤニヤしていました。面白かった。キスクラで誰得な投げキッスを振りまくフアン・カルロスとか。笑いました。
津村さんは怒り系コメディかと思いきや、こういうのんびりしたのも書くんだねえ。はあ、フリーが風邪でボロボロなフアン・カルロス……もう、こういうのほんと弱いの……というわけで、緩いフィギュアスケートファンは読んでみたらいかがでしょうか。
これ一人称なんだよね。三人称しか書かない人かと思ってたわ。書き方や印象はさほど変わらないけど、小説の内容とあいまって温かい感じがしました。私は台詞を地の文に入れ込んである鍵括弧の少ない文章が好きなので(原稿のときに読みたくなる)今後もたくさん書き続けてほしいです。
表題作、意味はそのまんまで、豪雨に見舞われ交通機関が乱れて帰るに帰れない人の話。イマイチ。だらっとしていてエンタメ的なオチや仕掛けもなく、ひたすら雨に耐えるように読み進んで残り3ページで寝落ちしました。怒り芸も控えめだしなあ。何かが振り切れててくれないとつまらないかも。
表題作が微妙だったから星は少なめだ!