Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

津村記久子『ポストライムの舟』  ★★★

29歳、工場勤務のナガセは、食い扶持のために、「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々。ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ一六三万円で、一年分の勤務時間を「世界一周という行為にも換金できる」と気付くが―。ユーモラスで抑制された文章が胸に迫り、働くことを肯定したくなる芥川賞受賞作。(Amazon

「働くことを肯定したくなる」? 嘘だあw
 表題作。主人公は奈良で母親と二人暮らし、工場勤めをしながら友人の喫茶店とPC教室講師のバイトを掛け持ちして、それでもやっぱりお金はない。津村さんはそういう作風なんですかね。あまりたくさん読むと落ち込んで不安に駆られるね(笑)ラストで癌を宣告されたりしなかったのが救いでした。最悪はまぬがれるのかもしれん。しかし結婚というものは……元々、夢も希望も持っていないけれども。
 「十二月の窓辺」は作者のパワハラ経験を元にした話で、主人公が思いつめていく様がしんどいんだけれど、ナガトとの関係にちょっとときめいたのと、ミステリ的仕掛けがあったのとで、エンタメ寄り読者としてはすっきり面白かった。働くのはしんどいね!