Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

松浦理英子『裏ヴァージョン』  ★★★★★

 泣いたわ……号泣だわ……泣いたからって良い・好きな作品とは限らない、そんなの分かった上で一つの指標として涙を使うわ。うまく読み手の感情を盛り上げるだけの力を持っている。いや、これ想像以上だった……松浦さんの中で一番好きだわ……。
みんな!松浦理英子の「裏ヴァージョン」を読むんだ!アラフォーの卒業腐女子と非卒業腐女子のガチンコバトルだよ!読んでるとこの人たち、お互いの事好き過ぎてもうアレだよねってなるよ。おそらく私がこれまでに接した小説の中で最愛のやおい小説だと思う。
https://twitter.com/#!/marinee0526/status/158074085354651649

 このRTを見て読むのを決めたんだけどね、もうほんとにガチンコバトルで、「胃がきりきりする」という意味で最高のやおい小説だった。何このエネルギーの塊。
 形式が変わっていて、どこまで述べてしまっていいのか分からないんだけど、一人が書いた小説に対してもう一人がコメント(ゴシック体で書かれる)をつけ、時折質問状や詰問状が混じって激しくぶつかり合う、というものなので、最初の6章くらいは二人の関係性も素性もよく見えないから、読み始めは特にとっつきにくい部類に入ると思う。でもアメリカ編(笑)を過ぎるともうほんとにガチでね、最後の一章なんてずるいの一言よ。褒め言葉ね。
 いやあいいものを読んだ。15章の描き方もそりゃ目を覚ませと言いたくなるような移り変わりで、いやあ、松浦理英子の文章(『犬身』のときとか)あまり好きではなかったんだけど、うまいねえ。いやもうこれはとにかく読むべしと、色んな人に勧めて回りたいです。同性愛とかSMとか通り越して二人しか見えない。疲れちゃった。
 一月から『荊の城』『裏ヴァージョン』と贅沢な読書をしていて幸先が良い。『半身』も合わせて読み返したいけどエネルギーが足りない……今週は『夜愁』しかストックがないから読まざるを得なくなるかな……でも今は二度三度と読み込むよりも初読の衝撃をもっと味わいたい気分。これがやめらんなくて小説読んでるんだよ。麻薬だな。
 てか、松浦理英子の中で女性二人の関係性が一番安定して幸せなのって『犬身』なんじゃないの……犬にまでいかないとダメなんじゃないの……。