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Memoria de los Libros Preciosos

続きを読むとクリティカルなネタバレがあります

中山可穂『感情教育』  ★★★★☆

これ1作でわたしは年老いた――(文庫版あとがきより)

女と女。胸に突き刺さるような至高の愛。
中山可穂の最高傑作!

前世から契りあった恋人はあなたですか?今度こそ永遠に契りあうために、あなたはそこで待っていてくれたのですか?
那智と理緒。傷つくことにすら無器用な2人が出会ったとき、魂がふるえ、存在の根源をゆさぶる至高の恋が燃えあがる。同性同士の愛の極北を描く、山本周五郎賞受賞作家による傑作長篇!(Amazon

 最初からネタバレになってしまうけれど恋愛ものはそこに触れずには書けないところがあるので失礼。
 よかったねー!笑 私は主要登場人物によかったねえと言うのを歓びとして読書をしてるんじゃないかとたまに思うわ。よかったねと思えれば途中に何があっても目をつぶれるし、幸せな気持ちで本を閉じることができる。長編については特にそうだ。長々(ってほどでもないが本書は)読んだ後に絶望に叩き落されるのも幸せだけど、やはり恋愛小説の類は入り込めば入り込むほど彼らのハッピーな結末が見たいよ。いつもの通り人妻略奪愛で二人も夫もボロボロになっていたけれど、その割には望むべく最善のかたちで終わったのでよかった。
 一章で那智の、二章で理緒の生まれ育ちを描き、三章で二人を描く。中山さんの三人称は初めてだったけど、一人称より文章がうまく見えるなw 私の思い込みか。前半も十分壮絶だったが三章のようやく出会った! 恋愛始まった! というクライマックス感が素晴らしかったので印象薄れた。
 恋愛小説はハッピーエンドが見たいし、ミステリは主題となる仕掛けがきちんと解き明かされるのを見たいし、エンタメは広げた風呂敷を広げっ放しにするにせよ畳みきるにせよラストでは十分な盛り上がりが見たいという、非常に単純な読者である。短編はまた別。
 中山可穂は短編から入ったけど、長編の方がぐいぐい振り回してくれて好きだなー。乗り越えるべき障害が分かりやすすぎる(既婚者)という難点はあるが、それを抜いても。ケッヘルあたりはまた違うんだろうか。違う長編を読むたびに「この二人が一番好きだ!」と思わせる手腕はすごい。
 ただ、この本は疑似父息子の短編といい「女のようなヒステリー」などのミソジニックな物言いが引っ掛かるな。面白いだけに残念だ。彼女の生まれた時代を考えたら仕方ないことなのかもしれんが。私の中で、レズビアンフェミニストがかなり近い位置にいるのがいけないんだろう。レズビアンフェミニストレズビアンフェミニストな人もいるのに。